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私が誰なのか？
ここに居ていいのか。
どうして記憶をなくしてしまったのか。
どこからきて、これからどうすればいいのか。
この島で起きてから、ずっと頭の中で繰り返し浮かんでは消える疑問も、答えはなかなか出なかった。
一番の近道は記憶を取り戻すことで、そうすればこの疎外感も、喪失感もなにもかもが解消されると思った。
でも、そのために必要な世界で一番頭がキレる男が、私を取り戻すことを不安にさせる。
夢の中で見た開けられない科学実験室。
あれこそ、石神千空を示唆しているんじゃないか、と。
膝に頭を預けて、両手を地面につける。
じんわりと陽の光に照らされて温まる地面と、指先。
左手薬指の付け根にできた輪っか状のくぼみに視線を落として、じっと見つめた。
なにかがあって、私が彼らを忘れたいと思ったなら、それは何かと何度となく考えた。
きっと悪い人たちじゃない。
銃を作ったとき、全員が微妙な面持ちをしていた。
誰だって(もちろん石神千空も)あんな凶器を生み出したくて生み出したくてんじゃないってこと、分かっている。
まだみんな若いながらも思いやりがあって、資源も食料も、なにもかもが不足しているこの世界で譲り合える人たちだ。
過酷な世界だからこそ、互いに支え合うことの大切さを知っている。
そう思った。
でも、そうなればこそ、みんななにかを我慢して、見ないフリをしている。
石化してしまった親や友人。
大切な人々を復活させたい気持ちに蓋をして、今あるもので、手順を間違えないように、一つ一つ賽の河原のように石を積み上げて、文明復興へ向けて…
そこまで考えて、ぎゅうと胸が締め付けられた。
鼻の奥がツンとして、緩みそうになる涙腺を押しとどめようと強く目蓋を瞑る。
きっと、
きっと私は耐えられなかったんだ。
どこかで石化している両親から頑なに顔を背けてきたんだろう。
石神千空の父親が、石神村の始祖だということは、彼だけは、もう、会いたいと思っても会えないことを知っていたから。
口にせず、思い浮かべることも避けて、目の前のことに没頭するように生きて。
薄目を開けると、眩しい世界が少し滲む。
そこに見える、窪んだ左の薬指。
そこにあったはずの赤を思い浮かべたら、ついに耐え切れなくなって、頬を滴が伝った。
今、ここにいる人達は、誰一人として家族のことを語らない。
世界のどこかで石になった愛する人々を、想う言葉を口にしない。
心の中で独り、深くに仕舞い込んで鍵をかける。
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sora(プロフ) - カルーアさん» とても長い作品になってしまいましたが、終わりを惜しんでいただけて感無量です。なかなか世の中が落ち着きませんが、カルーアさんもお気をつけてお過ごしくださいませ。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2020年12月28日 23時) (
レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - カルーアさん» ご感想ありがとうございます。どんなに色んなものがなくなっても、人間の根底はそう変わらないと私は思っています。彼が好きだからというよりも、彼女のどこまでも人間らしい気持ちが、何より裏切りたくないという誠実につながるのではと考えました。なんだかんだで→ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
カルーア(プロフ) - この世の中コロナも変異種が出たりと不安が多いですし、soraさんも体調には気をつけてどうかお過ごしください。続編も楽しみにしています。 (2020年12月28日 9時) (レス) id: 0fc594eb2a (このIDを非表示/違反報告)
カルーア(プロフ) - 人生青史�ゴ扱襪�めでとうございます。夢主ちゃんは記憶が無い中で本の中の自分とその自分が愛している千空を信じ続ける姿に心打たれます。もうすぐ終わりということでとても寂しく思いますが、最後まで心より応援させていただきます。 (2020年12月28日 8時) (レス) id: 0fc594eb2a (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 坂田銀糖さん» 書き込みありがとうございます。本当は毎日更新をまたしたいのですが、なにぶん気分の上下が激しく…できる時にまとめて更新になってしまい申し訳ありません。後少しで彼女と彼の関係も変わるかと思います。もう少しこのまま読み進めてください。よろしくお願いします。 (2020年12月27日 21時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年10月21日 9時
