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完全に油断して、ただ突っ立っているだけの兵士。
どうやってこの男から逃げて、手足の拘束を取ろうかと思考を回す。
けれど、どうやらその必要はないようだった。
ゴツンと痛々しい音が聴こえて、男がどさりと倒れ込む。
見ればその頭には大きなコブができていて、硬く拳を握った女の子…ニッキーが頬をさすりながら立っていた。
「怪我はないかい、A」
自分はさっきモズに殴られて飛ばされたと言うのに、なんてことないような顔で私のそばにしゃがみ込み、手足の拘束を解いてくれる。
「あ、あなたこそ思い切り殴られて…」
「ああ、アタシは大丈夫だよ。受け身の取り方くらい何度もやってるからね」
「…ありがとう」
私ではびくともしなかったロープもあっさりと切ってくれて、自由になった両手を動かしてみる。
ふと、視界に灰になってしまった自分史が映ったけれど、すぐに目線をずらして深く息を吐く。
「Aはこのまま船を降りな。アタシは千空たちを追って…」
「私も行く」
「ええ？」
イバラの目的は、島全体を石化させること。
まだ侵入者が何人いるかわかってないのに、今ペルセウスにいる全員を始末しただけで満足するはずがない。
となれば、とにかくイバラのそばにいて、キリサメが石化武器を渡すのを阻止しなければ。
石化しても、千空がいれば生き返らせられる。
逆に言えば、千空がいなくなってしまったら、もうどうしようもないのだ。
私が身を挺して石化武器を奪えば…
唇を噛んで、反対するだろうニッキーを見上げれば、彼女は少し黙った後、なぜか柔らかく笑った。
「仕方ないね。後でアタシが千空に叱られなきゃいいんだけど」
「その千空を守らないと、勝ち目がないんだよ」
「分かってるって。さあ行くよ。離れないようにね」
船内に入ると、狭く急勾配な階段が続いているのが見える。
取手を逆手に取ってそこを降りながら、注意深く周囲を見渡すニッキーが「どこに行ったんだろうね」と顔をしかめた。
「ラボカーは、島にあるんでしょう？」
「ああ、置いてきたよ」
「じゃあ、薬品とかがある倉庫とか…」
「それなら船底にあるけど…あそこには…」
ハッとしてこちらを振り返るニッキー。
なぜ急に見られたのか分からなくて身構えると、彼女は気まずそうに顔を背けて、また階段を降り始めた。
「アンタには言いにくいけど…」
言葉を選ぶ彼女の声で、「あそこには氷月とほむらがいるんだよ」と言った言葉に、私は思わず足を止めてしまった。
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sora(プロフ) - カルーアさん» とても長い作品になってしまいましたが、終わりを惜しんでいただけて感無量です。なかなか世の中が落ち着きませんが、カルーアさんもお気をつけてお過ごしくださいませ。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2020年12月28日 23時) (
レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - カルーアさん» ご感想ありがとうございます。どんなに色んなものがなくなっても、人間の根底はそう変わらないと私は思っています。彼が好きだからというよりも、彼女のどこまでも人間らしい気持ちが、何より裏切りたくないという誠実につながるのではと考えました。なんだかんだで→ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
カルーア(プロフ) - この世の中コロナも変異種が出たりと不安が多いですし、soraさんも体調には気をつけてどうかお過ごしください。続編も楽しみにしています。 (2020年12月28日 9時) (レス) id: 0fc594eb2a (このIDを非表示/違反報告)
カルーア(プロフ) - 人生青史�ゴ扱襪�めでとうございます。夢主ちゃんは記憶が無い中で本の中の自分とその自分が愛している千空を信じ続ける姿に心打たれます。もうすぐ終わりということでとても寂しく思いますが、最後まで心より応援させていただきます。 (2020年12月28日 8時) (レス) id: 0fc594eb2a (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 坂田銀糖さん» 書き込みありがとうございます。本当は毎日更新をまたしたいのですが、なにぶん気分の上下が激しく…できる時にまとめて更新になってしまい申し訳ありません。後少しで彼女と彼の関係も変わるかと思います。もう少しこのまま読み進めてください。よろしくお願いします。 (2020年12月27日 21時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年10月21日 9時
