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岬の方から響いて聞こえた鉄の弾ける音に、私は思わず視線を投げた。
遠くて見えないけれど、あの音を聴き間違えるはずがない。
海哭りの崖とは方向が異なっているから、ペルセウスが出航していることに気がついて海岸まで追いかけてきた、のかな。
だとしても弾数の限られている拳銃を、なぜ今撃ったのか分からないけれど。
少なくとも、彼らがこちらへ近寄ってきていることは伝わった。
「…あれは、火？」
音に気を取られて、船に乗り込んでいた全員が島を振り返っていた。
イバラも例外ではなく、その細い目で見つめている。
けれど、どうやら捉えている対象が異なっていたようだった。
彼がこぼした言葉に、私は音の出所を探すのを止め、宰相の視線の先を辿った。
みれば、頭首の巨木の至る所から煙が上がっている。
大きな木だったし、ここ数日は雨もなかった。
よく乾いた小屋や渡り廊下も備えついていたからか、遠目からでもチラチラと炎が視認できる。
その赤が、かなり遠くに見えるはずなのに、すぐ近くで炎立つように見えて。
「火…、」
燃え盛る小屋はどこかで見たことがあると思った。
現代の建物ではなくて。
それは住居というにはあまりに暦を重ねた風体で、今見えるように、よく乾いた、使い込まれた木材が燃える様子が、はっきりと思い出される。
体験にないはずなのに、あまりに鮮明に脳裏に浮かぶから、まるで題名さえ忘れてしまった映画のワンシーンのようだ。
わずかな頭痛を覚えて、私は縛られた手のまま頭を抑えた。
そんな私に気づきもせず、イバラは不敵に笑う。
その眼差しが、あの巨木が燃えてしまおうと、彼にとっては些末なことなのだと十分に物語っていた。
…どうしてこう、モノへの愛着を抱けない人が多いの。
戦いで着いた火なのか、意図的なものなのかは分からないけれど…
船の機材にしろ、巨木の住居にしろ、容易に戦争を始める人たちにしろ。
早く解放されたい。
母親の声で起きて、父親と一緒に朝ごはんを食べて、学校へ行って。
そんな平凡なあの世界に戻りたいと強く思った。
千空たちと分かれて、僕たち頭首像奪取組は敵の根城へきていた。
ほとんどがペルセウスの方へ出払っているとはいえ、まだ数人の兵士が見える。
本当はこんな手荒なことはしたくないけど、戦いながら頭首像を持ち出すのは大変そうだ。
だから火矢をいくつか打ち込んで(もちろん燃え広がらない場所を選んで)、兵士たちの意識がボヤの方に向くよう仕向ける。
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sora(プロフ) - カルーアさん» とても長い作品になってしまいましたが、終わりを惜しんでいただけて感無量です。なかなか世の中が落ち着きませんが、カルーアさんもお気をつけてお過ごしくださいませ。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2020年12月28日 23時) (
レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - カルーアさん» ご感想ありがとうございます。どんなに色んなものがなくなっても、人間の根底はそう変わらないと私は思っています。彼が好きだからというよりも、彼女のどこまでも人間らしい気持ちが、何より裏切りたくないという誠実につながるのではと考えました。なんだかんだで→ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
カルーア(プロフ) - この世の中コロナも変異種が出たりと不安が多いですし、soraさんも体調には気をつけてどうかお過ごしください。続編も楽しみにしています。 (2020年12月28日 9時) (レス) id: 0fc594eb2a (このIDを非表示/違反報告)
カルーア(プロフ) - 人生青史�ゴ扱襪�めでとうございます。夢主ちゃんは記憶が無い中で本の中の自分とその自分が愛している千空を信じ続ける姿に心打たれます。もうすぐ終わりということでとても寂しく思いますが、最後まで心より応援させていただきます。 (2020年12月28日 8時) (レス) id: 0fc594eb2a (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 坂田銀糖さん» 書き込みありがとうございます。本当は毎日更新をまたしたいのですが、なにぶん気分の上下が激しく…できる時にまとめて更新になってしまい申し訳ありません。後少しで彼女と彼の関係も変わるかと思います。もう少しこのまま読み進めてください。よろしくお願いします。 (2020年12月27日 21時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年10月21日 9時
