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Aの横顔はどこか憔悴して見えた。
やっぱり独りで潜入したのも、銀狼たちが石化してしまったことも、ジュウという武器が出来たことも、彼女にとって辛い事だったんだと想像させた。
水をかくオールの重みを確かに感じながら、なるべくゆっくりと海の上を進んで、すぐ近くの陸地に寄せた。
Aは陸に上がったあと何回か深呼吸して、風が乱していく黒髪を耳にかける。
黙っていたら、記憶がないなんて思えないほど、普段通りだった。
記憶力がいい方らしい俺は、今までのほとんどを忘れてしまうなんて、全く想像つかないけど…
Aは最初からあんまり取り乱しもしないで、千空たちのことも分かってたように見えた。
その事がずっと疑問だったから、カヌーから上がらないまま、俺は意を決して彼女の背中へ声をかけた。
「Aは、その…記憶をなくしても千空や俺たちのことを知ってるみたいだったけど…」
くるりと振り返ったAの目と目が合ったとき、今の言い方だと誤解を招くんじゃないかって、途端に不安になった。
「あ、いや！記憶がないこと、疑ってるわけじゃなくて…」
「…」
「ただ、どうしてだろうって…」
居心地の悪い思いがして、やっぱり聞かなければ良かったと後悔した。
けど、Aは呆れたり嫌な顔したりせず、ゆっくりと話してくれた。
「…みんなのことを書いた日記を持っていたの」
「ニッキ？」
「日々あったことを書き残した本だよ。それを1冊、大事に持ってた」
「今はイバラが持ってるけれど」と一瞬眉根を寄せて、Aの眼差しはまた海へ向く。
「そこに全部書いてあった。3700年前の石化光線のことも、その後の世界のことも、科学王国が出来るまで、出来たあと…私の記憶が、少しずつなくなっていく様子も、全て」
「…」
「日記と言うには壮大だから、私はそれを人類青史と名付けたみたい」
人類は分かるけど、青史ってなんだろうと無言で首を傾げると、後ろにいる俺の様子を見もしないで、Aは「青史はね」と言葉を続けた。
「歴史という意味だよ」
「じゃあ、人類の歴史ってこと？」
「そうだね。今は、ここにいるみんなが人類の総称だから…」
人類青史は、科学王国の全てだ。
「私がたくさんの事を書き留めていてくれたから、多少分かるだけだよ」
「さ、さすがだね…」
「そうかな」
もし俺に文字が書けて、同じことをしろと言われたら出来るかと考えて、絶対無理だと思った。
こんなに差異なく居られるほど正確な本なんて…
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sora(プロフ) - カルーアさん» とても長い作品になってしまいましたが、終わりを惜しんでいただけて感無量です。なかなか世の中が落ち着きませんが、カルーアさんもお気をつけてお過ごしくださいませ。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2020年12月28日 23時) (
レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - カルーアさん» ご感想ありがとうございます。どんなに色んなものがなくなっても、人間の根底はそう変わらないと私は思っています。彼が好きだからというよりも、彼女のどこまでも人間らしい気持ちが、何より裏切りたくないという誠実につながるのではと考えました。なんだかんだで→ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
カルーア(プロフ) - この世の中コロナも変異種が出たりと不安が多いですし、soraさんも体調には気をつけてどうかお過ごしください。続編も楽しみにしています。 (2020年12月28日 9時) (レス) id: 0fc594eb2a (このIDを非表示/違反報告)
カルーア(プロフ) - 人生青史�ゴ扱襪�めでとうございます。夢主ちゃんは記憶が無い中で本の中の自分とその自分が愛している千空を信じ続ける姿に心打たれます。もうすぐ終わりということでとても寂しく思いますが、最後まで心より応援させていただきます。 (2020年12月28日 8時) (レス) id: 0fc594eb2a (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 坂田銀糖さん» 書き込みありがとうございます。本当は毎日更新をまたしたいのですが、なにぶん気分の上下が激しく…できる時にまとめて更新になってしまい申し訳ありません。後少しで彼女と彼の関係も変わるかと思います。もう少しこのまま読み進めてください。よろしくお願いします。 (2020年12月27日 21時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年10月21日 9時
