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硬いココナッツを割り(ソユーズと名乗る男の人に手伝ってもらった)、内殻を剥ぎ取る。
それをバキバキに割ってすりおろしたものに、水を加えて手で絞った。
そんな単純作業を何度も繰り返せば、現代でも目にするココナッツミルクの出来上がりだ。
「あとはこのココナッツミルクを、火にかけて根気よく加熱し続けるの」
「ココナッツミルクってこんなに大変なのね〜割ったら出てくるもんだと思ってたよ俺」
焦げないように火にかけた鍋をかき混ぜながら、メンタリストが感心したように言う。
色んな人の手を借りて、ようやく出来上がったそれを石神千空に手渡した。
…どうして私、こんなことしてるんだろう…
記憶を取り戻すために必要だとしても、それもこれもコハクを可愛くするためのものだ。
何も覚えてないくせに、それを面白くないと思ってしまうのは、完全にお門違いなのだろうけれど。
小さくため息をついてしまう。
兎にも角にも石化武器を手に入れて、過去の『私』を取り戻すためだと割り切ろうと思った。
彼の軽口が聞き流せないのも、きっと彼との思い出がないからだ。
全てを思い出せば、さっきの些細な言葉も、彼ならではなのだと聞き流せるの、かな。
そんなことを思いながら、ココナッツオイル入りの瓶が彼の手に渡って行くのを見る。
ふと、そのガーネットの瞳が、やけに楽しそうに輝いているのに気づいた。
「南の島のココナッツオイルに、おなじみ水酸化ナトリウムと、これまたおなじみ硫酸をブチ込む！」
「い〜ね〜ラボが戻ってきた！って感じね〜」
ガチャガチャとガラスを擦らせながら、いろんな瓶を抱えて石神千空がラボカーから出てくる。
「A。ラボん中から丸底フラスコと三脚持ってこい。それとアルコールランプと分液漏斗」
ガラスの板を作業台替わりにするように設置しながら、彼はこちらを見ずに言う。
うーん。まるで当たり前のような言い草だけれど。
何となく、彼のキラキラしている瞳に逆えず、言われた通りのものをラボカーの中から探し出して手渡した。
石神千空は、数々の実験器具を慣れた手つきで扱いながら、よく分からない工程を次々に踏んでいく。
硫酸は危険だという彼の言葉に従って、私たちは静かにその様子を眺めていた。
彼の傷だらけの指先が淀みなく動く様子は見ていて楽しい。
けれど、一番楽しんでいるのは本人のようで、終始その口角に彼の感情が現れていた。
…少年みたい。
「塩と油混ぜてトロみが出たら完成だ！」
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sora(プロフ) - 北さん» そして、この小説をきっかけにアニメだけではなく、原作まで手を伸ばしていただけたこと本当に嬉しいです。原作の彼らが大好き過ぎてできた作品なので、是非本編を片手に読み進めていただけると幸いです。宝島編はまだ続きますが、最後までよろしくお願いします。 (2020年8月2日 16時) (
レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 北さん» いつもご感想ありがとうございます。小さな手がかりからでも誕生日を当てられるくらい、彼も彼女のとの些細な日常を大切にしていると思います。いつも静かに寄り添ってくれていたからこそ、真正面からぶつかるのは、彼自身ドキドキしたかと思いますが。→ (2020年8月2日 16時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 実は私、アニメ民でほとんど内容を知らなかったんです。けれど、この小説を本当に楽しく読みたいと思い、漫画も読み始めてしまいました。（ついでに星の息も読み返してしまい追いつくのが大変でしたが）。これからも無理のない程度に頑張って下さい。楽しみにしています (2020年8月2日 0時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 千空が誕生日を当てたとき、なんてヤバイやつなんだ…と心から尊敬しました（一個前の作品と続けて読んだためこの章じゃないかもしれませんが）。本当にsora様の書くお話が好きでたまりません (2020年8月2日 0時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 完結お疲れ様です。お疲れ様でした。本当…もう…素敵でした…。私の語彙力では言い表せませんが、とにかく読んでいて幸せでした。愛史ちゃんの記憶が消えてしまってとても悲しいですが、記憶がなくなってもなお、千空を信用していてなんだかきゅんきゅんします。 (2020年8月2日 0時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年7月19日 22時
