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「それは違え」
むしろ逆だ。
ガキの頃から、科学以外の多くは、こいつの話を聞いて興味が湧き、覚えたことがたくさんある。
自分で勉強したものもあるが。
昔話をすることが、今のAにいい事なのか分からねえ。
だから上手く二の句が継げずに、ぶっきらぼうな返答のみで終わったが、Aは何かを察したらしく「ふうん」と相槌を打って、垂れる髪を耳にかけた。
「昨日は半日、何してたんだ」
その服も、石の靴も。
この島の誰かと接触したことは確かなんだろう。
「溺れてたのを島の人が助けてくれたの。戦士だって言ってた」
「…ほーん」
「大きなツリーハウスに連れていかれたんだけれど、色々あって出てこれて…船の生き残りに会えば、自分の事が何が分かるかと思って」
大きなツリーハウス？
「聞きたいことは多いけれど、何から聞いたらいいか分かんないや」
そう言って苦笑を零すA。
そこまで物事の整理が下手な女じゃねえことは知ってる。
混乱してるのもあるんだろうが、きっと、質問するのを遠慮してる方が理由としてデカいと思った。
「…記憶を取り戻すには、お前を1度石化させる必要がある」
だから、あえて、俺から説明してやることにした。
驚いたような顔のAがこちらを向く。
「忘却と違って、お前のは思い出さねえように蓋してる状態だ。そういう脳のバグも、理論上、石化が解ける瞬間の修復力を利用して治せる」
「…人が石化するのって、本当なんだ」
複雑な表情を貼り付ける様子を見て、ほっとした。
博愛精神は変わっちゃいねえようだ、と。
「…もし、それでも思い出せなかったら」
どうしよう。
そう続くのが手に取るようにわかる。
だがそれを飲み込んで、Aが顔を上げた。
「私は前の『私』と違うかもしれないけれど…あなたは、」
そこまでで言葉を切ったAが、気まずそうに自分の毛先を弄る。
そうやって毛先を弄る癖も、困って垂れる眉も、なにもかもがそのままだ。
それに続く言葉はなんだ。
それでも仲間にしてくれるのか。
それでも信用していいのか。
それでも、好きでいてくれるのか。
色んなもんが予測ワードで浮いてくるが、結局、どの問に対しても答えは一つだ。
岩肌に投げ出されている方の手をそっと握る。
反射的にこちらを向いた黒曜石には目を合わせず、真っ直ぐ海を見つめる。
すると同じように、黒曜石も、明け始めた太陽光を反射する青へ向かった。
何も言わなくていい。
手の先から伝わる熱が答えだった。
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sora(プロフ) - 北さん» そして、この小説をきっかけにアニメだけではなく、原作まで手を伸ばしていただけたこと本当に嬉しいです。原作の彼らが大好き過ぎてできた作品なので、是非本編を片手に読み進めていただけると幸いです。宝島編はまだ続きますが、最後までよろしくお願いします。 (2020年8月2日 16時) (
レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 北さん» いつもご感想ありがとうございます。小さな手がかりからでも誕生日を当てられるくらい、彼も彼女のとの些細な日常を大切にしていると思います。いつも静かに寄り添ってくれていたからこそ、真正面からぶつかるのは、彼自身ドキドキしたかと思いますが。→ (2020年8月2日 16時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 実は私、アニメ民でほとんど内容を知らなかったんです。けれど、この小説を本当に楽しく読みたいと思い、漫画も読み始めてしまいました。（ついでに星の息も読み返してしまい追いつくのが大変でしたが）。これからも無理のない程度に頑張って下さい。楽しみにしています (2020年8月2日 0時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 千空が誕生日を当てたとき、なんてヤバイやつなんだ…と心から尊敬しました（一個前の作品と続けて読んだためこの章じゃないかもしれませんが）。本当にsora様の書くお話が好きでたまりません (2020年8月2日 0時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 完結お疲れ様です。お疲れ様でした。本当…もう…素敵でした…。私の語彙力では言い表せませんが、とにかく読んでいて幸せでした。愛史ちゃんの記憶が消えてしまってとても悲しいですが、記憶がなくなってもなお、千空を信用していてなんだかきゅんきゅんします。 (2020年8月2日 0時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年7月19日 22時
