一寸先の闇 ページ7
どろりと、溶けるアカを見た。
重力を失って浮く体。
どこに足をつけたらいいか分からない。
手を伸ばしても光のないガーネットに触れることも出来ず。
力なく垂れる腕が恐怖心を煽る。
いやだ
いやだいやだ
走っても走っても、地面を蹴る感覚がない。
前へ進めない。
追いつけない。
けれどあなたはどんどん先へ進んでしまう。
まって、おねがいまって
お い て い か な い で ！
「はっ、あ…」
目一杯に肺へ空気を吸い込む。
灯りがない世界に体が硬直して、吸い込んだ空気を上手に吐けない。
寝ても覚めても一寸先すら見えない暗闇が恐ろしくて、両肩を抱き込む。
さ、われる
だいじょうぶ、だいじょうぶ
自分自身がそこに存在していることが、少しずつ正常な思考を取り戻させる。
けれど、どれだけ目を凝らそうと何も見えない闇が、私の僅かな意識さえ溶かしてしまいそうで指先が震えた。
息苦しい。
酸素が足りなくて指先が痺れる。
全身から熱がなくなったように感じた。
雪山の遭難者のように、ガチガチと体が硬直していく。
あ、あ、まずい
「A」
過呼吸になりかけた私の背中を、ふと、温かい手が撫でてくれた。
何も認識できなかったそこに、眩い灯りが燈される。
一瞬白くなった視界を細め、光の中に見えるそれが何だったか必死に思い出す。
やがて視界が落ち着くと、心配げに私を見るガーネットを確認することできた。
落ち着いているけれど、私の状態を診ようとしてくれているのが分かる。
引き結ばれた彼の唇。
真剣な眼差し。
吸ってばかりいた空気を、ようやく吐けた。
酸素の供給経路が正常になったことで、ようやく状況を把握できるようになった。
いまは、テントの中で。
司の手術を終えたばかり。
千空は冷凍庫を作るから、先に寝ていろと言われて…
ひとりで横になっていたはずなのに。
けれど、目の前には確かに千空がいて、その目の下にはうっすらと隈があった。
いま何時なんだろう。
真っ暗だから夜中であることは確かだけれど、もしかして彼が寝ついてすぐだったのかもしれない。
罪悪感が湧いてきたけれど、どうにも彼を気遣う余裕がなかった。
「悪夢にうなされるとかガキかお前は」
呆れた口調のくせにその手や眼差しは優しくて。
肩肘をついて私を見下ろしてくる千空がじわじわと滲んでいく。
「…怖い夢をみたの」
「知ってる」
先を促すようにトントンと私の背中でリズムを刻む。
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綾瀬 - 続きの月の船も、もちろん拝読させていただきますが一旦気持ちが抑えられず…コメントさせていただきました…。失礼します。 (4月25日 17時) (
レス) id: 27ab9d3713 (このIDを非表示/違反報告)
綾瀬 - コメント失礼します。毎日読み進め、作品に浸る時間がとても楽しかったです。読み終えて、こんなにも充実した気持ちになる作品に巡り会えとても嬉しい気持ちです。Dr.STONEは勿論好きですが何よりsoraさんの文章力や表現が素敵で思わずコメントしました。大好きです。 (4月25日 17時) (レス) @page41 id: 27ab9d3713 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 鈴音さん» 書き込みありがとうございます。星の息を読んでアニメだけではなく原作の漫画まで読んでいただけたいただけたこと本当に嬉しく思います。私もDr.STONEが大好きなので、その気持ちが伝わる文章が書けていたと分かり、作者冥利につきます。完読ありがとうございました。 (2022年2月23日 10時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音 - コメント失礼いたします。作者様の素晴らしい文章力とキャラ設定がとてもとても好きです！もともとアニメしか見ていなくて、単行本を買うべきか悩んでいましたが、この作品をきっかけに購入しました！素晴らしい作品を読ませていただき本当にありがとうございます！ (2022年2月19日 21時) (レス) @page41 id: e5b68abb09 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - shiochanさん» ご感想ありがとうございます。単行本で彼らの復活は読んでいて、私もどのように関わろうかと思案中です。なかなか相性が合うのか合わないのか微妙なところなので、違和感のないように描ければと考えています。文字になるまでもう少しお待ちください。 (2022年2月6日 21時) (レス) id: a1dae06abc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年2月16日 19時
