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「千空」
「ああ？あーーもうそんな時間か」
長時間の作業に凝り固まった肩甲骨をぐりぐり回す背中は、知り合った当初よりも確実に広くなっている。
中学にあがり間もなくして、身長も10cm近く離されてしまった。
やっぱり男子は成長が早い。
あの日、千空に声をかけられたことをきっかけに、私は結局彼ら化学実験メンバーにめでたく仲間入りを果たすことになる。
特に理科に興味が湧いたわけでも、その時千空への恋心を自覚していたわけでもないのにそうなったのは、石神千空という男の磁力が強いせいだと思う。
(あえて魅力とは言ってやらない。絶対)
まるで磁石に鉄線をぐるぐる巻きにして強化したかのような、強力な磁力。
彼は自分の「知りたい」「楽しい」が全ての原動力で、誰かのためにやっているわけじゃないのに、いつの間にか周りを巻き込んでいる。
こういうのを能力的リーダーと言うんだろうな。
きっと時代が時代なら、彼が国をひとつ持っていてもおかしくないだろうに。
砂利の上でも気にせず胡座をかき座る千空。
その傍に整然と並べられた器具は、私の頭では何に使うのか定かではないものもある。
器具の下には几帳面にタオルが置いてあるのに、自分は地べたにそのまま座るあたり、千空らしい。
いや、科学者らしいと言うべきか。
彼の知識は、とっくの昔に理科少年から科学者レベルに到達していた。
夕陽が落ちきる前に細々とした機材を片付ける。
声をかけられ我に返った千空も、今日の作業を中断して記録を紙に書き起こしていた。
黄昏時。薄暗くなるなか必死にメモする様子はすこし笑えた。
「今日は大樹来なかったね」
「あのデカブツも人間だからな。今頃無い頭捻ってんだろ」
「？なにかあったっけ」
定期テストはまだまだ先だと思うけども。
ピンとこない私を置き去りに、千空はさっさと荷物をまとめて土手を登り始めた。
どうやら答える気はないらしい。
何事も合理性に則る彼の生き方は、生きづらそうだが絡みやすい。
私も大概効率を重視する方なので、なんとなく千空の行動を理解できるし、言葉足らずを不快に思ったことは無かった。
「さて。今日はなににする？」
土手を登りきり、帰路に立つ。
ここからは私と千空の契約の時間だ。
「泳法の種類とその歴史。着衣状態で」
「また微妙なところを…科学関係ないじゃんか」
「ククク。いいから話せよ先生」
…そう。私は先生。
この男にあらゆる歴史を語ること。
それが千空との契約であり、私の役割だった。
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ななし - 心情描写に惹き込まれました！この物語をきっかけにDr.STONEと歴史文明、天文学にどっぷり浸かりました！まだ2回目の読み返しですが、夢小説の中で一番のお気に入りです。素晴らしい作品を作って下さりありがとうございます！ (3月5日 23時) (
レス) @page29 id: f002730078 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - ねねさん» コメントありがとうございます。4回も読み返して下さってるなんて、とても嬉しいです。千空落ちとは言え、羽京も好きなのでぜひ何度でも読み返してださい。まだ終わっていない物語ですので、最後までよろしくお願いします。 (11月17日 20時) (レス) id: 90b12c249d (このIDを非表示/違反報告)
ねね - 最近羽京くん不足なので読み返しに来ました！かれこれ4回目ぐらいなんですけど、毎回キュンキュンさせてもらってます。ありがとうございますっ！ (11月17日 16時) (レス) id: ddbda6a4fd (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - (´･ω･`)さん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなりすみません。長い物語ですが、手に取って読んでいただけて嬉しい限りです。また、ご指摘もありがとうございました。すぐに修正させていただきます。 (2021年11月25日 15時) (レス) id: a1dae06abc (このIDを非表示/違反報告)
(´･ω･`) - 初コメ失礼します。 続きが気になって、ページを進める度にワクワクが止まらない程面白いです！ ですが、1つ気になるところがあって…「シュミレーション」じゃなくて「シミュレーション」らしいです。数年前まで私も間違えてました(´△`°) (2021年6月3日 20時) (レス) id: 91ddaaeba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2019年12月7日 23時
