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風見side
Prrrrrrprrr
早川さんの電話がなる。また例の恋人だろうか。彼女はスマホの画面を見るとたちまち嬉しそうな顔をした。どうやら潜入捜査先の恋人ではないらしい。
早川さんは『ごめん、ちょっと出るね』と言って通話を始める。
『もしもし?どうしたの?
うん、この前はありがと。どういたしまして。』
とても幸せそうな顔をしている。
会話の内容的に電話をしている相手は男性のようだった。彼女のこんな嘘くさくない緩んだ幸せそうな笑顔を見たことがない。電話の相手は本物の恋人なのだろうか。それだとしたら降谷さんはその事を知っているのだろうか。
『それじゃあ、またね』
名残惜しそうな顔をしながら早川さんは電話を切った。そして俺の顔を見て『ごめんね、少し長くなっちゃった』と申し訳なさそうな顔をした。
「今の相手…………もしかして……恋人、ですか?」
早川さんは首を横に振る。
『私の、片思いなの』
そういう彼女は少し寂しそうだった。
片思い……。これほどまで男を手玉に取ることが出来る女性なのに何故片思いなんてことが起こるのだろう。相手の男性の顔を見てみたい。
『じゃあ、そろそろ仕事に戻るね。ありがと、風見』
「はい、こちらこそ長くなってすみません」
早川さんはじゃあねと笑顔で言ってからその場を立ち去った。
そして俺は彼女の『私の、片思いなの』という言葉を思い出した。
「(降谷さんと上手くいってると思ったんだけどなぁ)」
陰ながら応援していた上司の恋が実りそうもないというのは少し悲しかった。
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なみ - とっても面白いです。更新楽しみに待っています!!続きが楽しみです! (2019年8月8日 10時) (レス) id: 0ffda98372 (このIDを非表示/違反報告)
SHINO - 面白いです!更新待ってます! (2019年4月14日 21時) (レス) id: 5129f74190 (このIDを非表示/違反報告)
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