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風見side
この人の事は、分からない。
俺の渡した資料を見ている美しい顔をした上司のことだ。彼女は普段、おしとやかで優しい上司。しかし、降谷さんの前では悪態をついている。その姿を他人に見せることはなく、猫を被っている。
「(あの早川さんが誘拐された件以来、2人の雰囲気は良くなった気はするんだが)」
部下として、上司の恋を応援したい気持ちはある。あまり首を突っ込んではいけないが早川さんの前の降谷さんは好きな子をいじめてしまう小学生だ。傍から見てハラハラする。
『……?風見、どうしたの?』
彼女の顔を凝視していたのか、早川さんは俺の顔を不思議そうに見つめた。猫を被っていると分かっていても彼女の美しさにドキッとしてしまう。
「あ、いえ、なんとなく最近降谷さんと仲がいいなと…………」
『……まあ、助けて貰っちゃったしね。
あの時は風見にも迷惑かけちゃってごめんね』
「いえ!それは大丈夫です!!」
全力で否定する俺を見て早川さんは可笑しそうに笑った。
『降谷くんは、いつも正義だから。正義のためならたとえ火の中水の中でも行くんだろうね』
私はそんなことできる人間じゃないの。
早川さんは何故か悲しそうだった。
『公安警察はきっとそうでなくちゃいけないの。それなのに私は…………』
彼女はハッとした様に俺の顔を見た。
『ごめんなさい、こんなこと風見に話すんじゃなかった』
自分でも無意識のうちに心打ちを話していたのだろうか。
彼女は100人もの恋人がいるという噂だ。他人にはわからない苦しみがきっとあるのだろう。
「私は、降谷さんみたいに強くはありませんが何かあったら、頼ってください」
早川さんは驚いた顔をしたあと直ぐに優しい笑顔を浮かべて『頼りにしてる』と言った。
彼女は降谷さん以外の人間に素を見せない。
その言葉はほんとなのか、嘘なのか。俺にはわからない。でも、その時の彼女の笑顔はいつもより綺麗で、嘘なんてついているようには見えなかった。
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なみ - とっても面白いです。更新楽しみに待っています!!続きが楽しみです! (2019年8月8日 10時) (レス) id: 0ffda98372 (このIDを非表示/違反報告)
SHINO - 面白いです!更新待ってます! (2019年4月14日 21時) (レス) id: 5129f74190 (このIDを非表示/違反報告)
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