狗巻くんを泣かせたい！ (ページ24)

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――報告。□□市運動公園周辺、□□□池の呪霊について。

対象の呪霊は複数の低級呪霊と合体しており、事前報告よりも二つ上の一級相当にまで成長していた。

一年全員で任務に当たった結果、重軽傷者一名。死者無し。

備考、該当地域に立ち入った高校生達は肝試しではなく探しものをしていたようで、その途中呪霊に飲み込まれたが全員無事救出。現場で治療済み。死傷者は無し。――

「ん～っ、お疲れ様でしたぁ！」

「はい、お疲れー」

代表して(疲れた真希達に押し付けられたともいう)報告書を書くことになったAは、ようやく終わった仕事を前に、ぐぐっと伸びをして一息ついた。

「初めての任務、とっても楽しかったわ～」

「そうー？棘と仲良くびしょ濡れになったみたいだけど」

「ええ。青春、って感じでいいでしょう？」

「そうだねえ」

言いながら、目の前で大量の角砂糖を淹れたてのコーヒーに落とす五条を見て、Aも手元に置いていた紅茶を啜る。

唇に触れる液体の冷たさが、始める前は早く終わると思っていた報告書に案外手間取ったことを物語っていた。

「それで、この前の任務で僕ちょーっと気になったことがあるんだけどさぁ。

　――A、君、何か隠し事してるでしょ？」

包帯をずらして、空よりも海よりも青く澄んだ宝石のような目を、すっと細めて問う五条。

その見定めるような視線を正面から受けてもなお、Aは変わらぬ調子で頬を染めて、赤く艷やかな唇をゆるく釣り上げるだけだった。

「……ふふ、女の子はちょっとミステリアスなくらいが魅力的でしょう？」

否定も肯定もしない返事だったが、Aはそれ以上話すことはないと五条に背を向ける。

そのAの動きを追うようにして手入れの施された銀の長髪が揺れ、五条の鼻先を甘い香水の香りが掠めた。

五条が何か言うのを待たずして、カタンッ静かな音とともに職員室の戸が閉まった。

　 ◆

誰もいない廊下を一人、歩くAは随分上機嫌だった。

「五条先生、気づいちゃったかしら？」

「まあ別に、気づいたところで何かが変わるわけでも無いものねえ」

くすくす、と上品に笑いながら、誰かに話しかけている。
傍から見ればまるで一人で話しているような光景だが、Aは確かに、“何か”を相手にして話していた。

「実際、六眼ってどんな感じに見えてるのかしら？気になるわ～」

《……》

「ふうん、神様(・・)も知らないのね」