狗巻くんを泣かせたい！ (ページ15)

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「さあーん」

そして、真希が跳んだ時よりも、高く、高く跳躍する。

視界を奪われている呪霊は、呪力の気配だけを頼りにAと乙骨を追って首を持ち上げる。

遥か頭上高くから落下してくるAを喰らおうと、天に向かって口を開いた、その瞬間。

「しーい」

Aはピンを外した閃光弾を甲羅に残っている目玉に向かって投げる。

光が弾け、小さな呪霊達が纏めて目を瞑ったと同時、Aは下で大口を開けて待ち構えている呪霊めがけて乙骨を放り投げる。

「ごー」

乙骨が見事に呪霊の中へと入ったのと、Aの気の抜けたカウントが終了したのは同時だった。

「散れ」

5秒、しっかり数え終えた狗巻が小さな呪霊達を散らす。

Aはぬかるんだ地面の上で泥一つ飛ばさずに優雅に着地して、口を開けたまま固まっている亀のような呪霊を眺めた。

「乙骨くんが連れてきた子達は私が引き受けるから、皆はそのままよろしくね～」

「じゃけ！」

狗巻のノドナオールのストックは最後の一本。
それをついに飲み切って、力強い返事を返した狗巻にAは微笑む。

要領を得た真希とパンダがさっきよりも速いペースで呪霊を祓っていく中、暫くして呪霊の口からひょっこりと乙骨が顔を出した。

「あ、乙骨くん～！その人達投げて～」

「投げ…！？」

「大丈夫大丈夫、ちゃんと受け止めるから～」

ほら、と言いながら華奢な腕を広げるA。

受け止めるどころかそのまま腕ごと折れてしまいそうに見えるが、乙骨はこれまでのAの動きを思い返す。

真希と同じか、それ以上に軽やかに飛び回る身体能力。

男の乙骨一人抱えてもなお、その機動力は衰えなかった。

何より、今は狗巻の事もあって一般人を保護する考えのはず。

「…ちょっとだけ、ごめんね」

心底申し訳なさそうに、腕の中でぐったりと意識を失っている高校生にそう告げてから、乙骨はAめがけてそっとその体を宙に落とした。