空、空、空。

空二日目 ページ2

「あー、暑い暑い……」


ぼそぼそと独り言を言いながら、顔をぱたぱたと手で煽ぐ。


とは言っても、こんなのは気休め程度にもならないのだけど。


母にお使いを頼まれ、お小遣いに釣られて出て来たはいいけど……。


「まさかこんなに暑いとは思わないじゃん！！」


思わず大声で叫んでしまい、周りの視線を引く。


だけどそんなことは気にもならないくらい余裕がなかった。


あーあ、最悪……。


でも、こんな日には。


「空を見るに限る！！」


勢いよく拳を突き上げすぎて、手に持っていた袋が落ちてしまう。


それを慌てて拾い上げ、わたしはある場所に向かった。


スキップでもしながら。





「はー、疲れたぁ……」


たどり着くなり、その場に座り込んだ。


ここは、わたしが住んでいるマンションの屋上。


あ、別に開放されてる訳じゃないよ？工事用のはしごをこっそり登ったの！


いつ来ても疲れるなぁ……。


おっと、目的を忘れてた。


タタっと屋上の端に駆け寄り、柵を越える。


断じて、死のうとはしてない。


お母さんが見たら卒倒するだろうな……。


なんて考えながら、柵の向こうに足を下ろした。


とは言っても、完全に下ろしたわけじゃなくて、柵に腰掛けたまま足をぶらぶらさせている状態。


よし、気合ばっちり。


「いっせー…のっ！」


ぐん、と頭を上げると、そこには真っ青な空が広がっていた。


更に、白くてソフトクリームみたいにモクモクと膨らんだ雲。


入道雲……だっけ？


「おお……青い……」


最初に出た感想がこれだった。


いつだったか、空は青くないって聞いたことがある。


大好きだった、近所のお姉さんに。


わたしと同じ、空が好きな彼女はこう言った。


「空は青くないよ。空気中の塵が太陽の光にぶつかって青く見えるだけなんだ」って。


あと、「この空みたいに、見えるものが全てとは言い切れないよね」とも言ってた気がする。


わたしも大人になったら、そう思うのかな。それとも思わないのかな。


……どっちでもいいや。


だって、空は今日もこんなに綺麗なんだから！


わたしは反動をつけて立ち上がり、はしごに向かう。


また来るからね、お姉さん。


心の中で唱えると、もう二度と聞こえないはずのお姉さんの声が聞こえた気がした。

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