零くん、あのね！ La fin (降谷零/安室透)

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..



まぁま！

A、ただいま..


私の愛しい..2人。




..




くすぐったくなるような..

私がずっとずっと、待ち望んでいた日常――




..





「A？」


零..く..ん、




..





「あっ、」


返事をしようと喉まで出かかった。






なんだ..

また、ここか...





白で統一される視界。
それは、過去にも目にした事があった。
同じ様な光景..


「...った、」


うっかり、寝返りをうとうとした時だった。
下腹部と腕に違和感を感じて、もぞもぞと身じろぎをする。


「何..やってる..のよ。」


腕にくるりと巻きつけられた、リストバンド。
自分の名前や誕生日が記載されている。
よく分からない..憎らしい管が何本か伸びていた。



私はまたここにいるんだね..



可能な範囲で辺りを見渡してみると、
どうやら自分しかいない。
思った通り、病院のそれも個室だった。


個室かぁ..

いつまでここにいるか、検討もつかないけど..
きっと入院費が高いんだろうなぁ。
めんどくさいなぁ、と以前愚痴をこぼしながら加入していた生命保険が役に立つ時が来たと、
冷静に考えを巡らせる。


「ははっ、」


自分でも笑えた。
矛盾した状況に..




いつまでたっても霧散出来ない..
陰鬱な気持ち。
戸惑う現実。
感情を上手く制御出来ずにいた。
治療したって、それが一体何になるのだ。



だから....どうでもいい、

何もかも――




その一言に尽きた。





全てが、どうでもよくなっていた。

風見さんから、零君の真実を聞くまでは..

それも、着想し得ない真実を―――





なのに、入院費の事を呑気に考えている
自分が笑えたのだ。
それに、ぞんざいに扱ってしまった自分の身体。
今どういう状態か考えるのがとても..
怖かった..







..





それから、退屈な入院生活が始まった。
同じ時間帯に行われる、担当医の回診。
定期的に施される看護師のチェック。
心が全く踊らない三度の食事。

1番会いたいあの人の姿は、まだ...ない。

私がまた具合でも悪くなれば、駆けつけてくれるだろうか？暇なので馬鹿な妄想も時々する。





..






「A、着替えは棚に置いておくわよ？それと、前のやつは持って帰るわよ。」



病室に、いつもの美和子と由美の明るい声が響く。



「あっ、ありがとう！いつもごめんね。」

「いーの、いーの。最近、路駐の取り締まりばっかで暇だし。」




嘘...

本当は2人共、いつも忙しい事くらい
知っているんだよ。

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