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彼の褐色の大きな手が
静かに私のお腹に触れてくる。



そっと、そっと..

慈しむかのように―――



「A...もうすぐ..だな?」

「うん、早く..会いたいね?」

「あぁ。」



振り返らなくても分かるよ。
彼の満面の笑み。



「A..」

「んっ、零君..くすぐったいよ、」



耳元で囁く彼の甘い吐息、
なんとももどかしい。



「やっ、」

「だめだ、もう少し...A不足なんだ。」



首元にそっとその美貌を埋めようとする。



「あっ!」

「うわっ、なんだ?」



目が点の彼は、やっと首元から離れてくれた。



「零君、予約してたケーキ大丈夫だった?」


耳元でこそっと尋ねる。
そう、今日はこの子の3歳のお誕生日。


「あぁ、問題ない。ただ、行く時に公園で遊びたいって聞かなくて...時間かかってすまない。」

「そうだったんだ、ありがとう。」

「これくらい当然だろ?」



..



「んっ?」

「まぁま、おてて。」


ふとロングワンピースが揺れる先を見下ろすと、
我が子が裾を握りしめていた。

帰宅するといつも、息子と一緒に手を洗っていた。
幼児なので高さが足りず、どうしてもこの子1人だと
我が家の洗面台が利用出来ない。
その為私が息子を抱えてやったり、椅子に立たせて洗わせたりして対処していたのだ。

だから、早く抱っこしてよ!
とおねだりしているのだ。



「よしっ!パパと洗うぞ。」

「やぁ、ままぁ。」



お腹の張りが日に日に増して行く中、
最近ではほとんど抱っこをしてやれない。
そのせいか、やけに甘えたがるのだ。

零君は私の大きなお腹に視線をうつしながら、



「ママは今、抱っこしてやれないんだ。」

「やぁーっ!やだやだ、」

「パパじゃ駄目か?」



ぐずる息子を優しくなだめるパパこと...零君。


「ほら、カッコいい踏み台があるんだ。あれで洗おうな?」


幼児用の小さな踏み台を置いている方を
指差す零君。



「かっこいい?」

「あぁ、大好きな新幹線だぞ!」



出たっ!

困った時に登場する、零君の..
必殺、物で釣る作戦。




― おい、A。
子供が出来たら厳しく育てるぞ ―



と、やや亭主関白気味に息巻いていたのに
蓋を開けたら...
1番甘いのは、どこの誰だか?




「もうすぐ、お兄ちゃんになるんだ。頑張れるよな?」

「うんっ!おにーちゃんになるう。」



そう言って、仲良く洗面所へと姿を消す2人。




..




私がずっと待ち望んでいた、

至極平凡な日常。

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設定タグ:降谷零 , 安室透 , 名探偵コナン   
作品ジャンル:アニメ
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やっち(プロフ) - 良かったです。すれ違いが凄かったけど最後は結婚出来て良かった! (2022年8月4日 6時) (レス) @page49 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
ポポロン(プロフ) - salomeさん» こんにちは!続編のご希望頂きまして有難う御座います(^^)ゆっくりではありますが、只今準備させて頂いてます♪新作と続編、一旦同時にリリースしたいと思っております(*^ω^*) (2019年6月10日 9時) (レス) id: 79673368f7 (このIDを非表示/違反報告)
ポポロン(プロフ) - 華花。さん» 初めまして!誤字脱字などお見苦しい点など多々あったにも関わらず、その様に仰って頂き嬉しい限りです(^^)やっぱり自分の好みは中々変えれず、新作も同じ様な雰囲気の作品かもですが宜しくお願い致します(*^o^*) (2019年6月10日 9時) (レス) id: 79673368f7 (このIDを非表示/違反報告)
ポポロン(プロフ) - 星の桜さん» 有難う御座います!最高と言って頂けてとても嬉しいです(^^)短編もご希望頂いて俄然創作意欲が湧きます!只今準備中なのでもう少々お待ち下さいませ(*^o^*) (2019年6月10日 9時) (レス) id: 79673368f7 (このIDを非表示/違反報告)
salome(プロフ) - 完結おめでとうございます出来たら出産の後の2人目の子育てやハロが降谷家に来た話とがいっぱい書いてほしいです (2019年6月6日 13時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ポポロン | 作成日時:2019年4月14日 4時

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