零くん、あのね！ La fin (降谷零/安室透)

Voiture ページ15

..


「流石降谷さん、読みが当たってましたね。」


車内で会話をする男性2人の声は明るい。
それもその筈。
数日前に、例の組織に繋がる要素の一部を潰せたのだ。今日はその後処理で部下数人を引き連れ、
問題となった現場に赴いた帰り。




「風見、暫く寝てるといい。連日連夜の立会いで、君も疲れただろ？」



自分なりの部下への労り。
風見の重そうな瞼...



「め、滅相もございませんっ！降谷さん差し置いてそんな事できる訳ないですよ。」

「どうせ庁舎に戻ったら、また帰れないんだ。遠慮するな。」

そう言って、自ら愛車のハンドルを握り軽快にアクセルを踏む。

「それと..さっきの続きだが、これは皆が日頃から必死に得た情報の積み重ねさ。ありがとう。」




与えられた任務にひたすら没頭する日々。
この命が..惜しく感じた瞬間は多々あった。
だけど、俺はまだ..
こんな所でくたばる訳にはいかないのだ。


戻りたい...
帰りたい...
場所があるから――



まだ組織を完全に壊滅できた訳では無い。
だけど、確実にそのゴールに近づきつつある。

そして時折耳にする、風見からAの元気な情報。
聞くたびに安堵した。





..





だから..

すっかり油断をしたのだ。





ブーブーッ...




鳴り止まぬ低い唸り。
静かな車内で煩く主張している。
ただ、俺の胸ポケットの中は静を保ったまま。


「おい、君の携帯じゃないか？」

「ふ、ふぁっ...っはい！」


夢と現実の狭間で揺れていた風見は、
慌てて受話に応じた。


「はいっ、風見で..... .. えっ！」



彼の会話がどうも気になってしまい、つい
きき耳を立ててしまう。



「なんで急に..」


..


「一緒です.....分かりました。」



「...」


何故か声を失う風見。
運転をしていても、視界の隅で風見に違和感を覚える。



「えぇ....今から向かいます。」



会話の相手は誰だろうか？
そして一体何処に行くと言うのだ。
これから庁舎に戻らねばならないのに。
終話した風見に問いかける。



「どうした？何か問題でも？」

「降谷さん、大変ですっ！！実は―――」









..






「.....です。」

「はっ！！？」



進路を変えるべきか一瞬躊躇したのだ。
答えはもう分かり切っているのに..
握っていたバンドルにぎゅっと力がこもった。






くそっ..

なんで..そんな勝手な事を..





俺は風見からまさかの事実を言い渡された。

それは―――

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