8 阿部side ページ8
宮舘「失礼します」
「羽田さんは?」
宮舘「今お風呂に入ってもらってその後傷の手当を」
「そっか。よろしくね」
宮舘「はい。お部屋はどうしましょうか?若とご一緒が宜しいですか?」
「ふふっ。彼女はそんなつもりで連れてきたわけじゃないから、客室案内してあげて」
宮舘「かしこまりました」
1本電話が終わったタイミングで、舘さんが部屋を訪れた。
宮舘「お疲れのようですね」
「まぁ…好き勝手やってた奴の処理とか、あとは俺の大切な友人を苦しめてた女の処理がね…」
通話をしてたスマホをテーブルに置き一息つくと、部屋の入口に座る舘さんが楽しそうに俺を見ていた。
宮舘「ふふっ。若はご友人の事が本当に大切なんですね」
「…大切か。大切だったらこんな所に連れてこないんだよな普通…俺にとってあの子は特別なんだよ。子供の頃に孤独だった俺と唯一友達になってくれた友達だから」
宮舘「若は昔からこの組の事を考えていたんですから、たまにはわがままになってもいいのでは?」
「…あまり俺の事を揺さぶらないでよ」
宮舘「それは失礼いたしました。それでは私はそろそろ羽田さんの手当に向かいますね」
「よろしく」
ずっと閉じられた障子。
1人になった空間で左手の小指を少し立てて眺めていれば、小学生の時の記憶が蘇る。
俺の家庭の事情を知って誰も近寄らなかったのに、羽田さんだけは唯一友達になってくれて、俺の為に泣いてくれた。
そんな彼女のことを俺は何年も忘れられなくて、もう会えないって思っていたのに、出会ってしまった。
彼女は普通の女の子で、こんな所に引きずりこんじゃいけないはずなのに、俺は気がついたら車に乗せて連れてきてしまっていて、自分の行動に頭を抱えたくなる。
「…はぁ。クソ何してんだよ俺は」
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作者名:ぽぽ | 作成日時:2022年11月30日 19時