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｢……凄かったねぇ｣
｢うんっ！ちあきくんたちきらきらですごかった！！｣
凄かった、という言葉しか出てこないほど何もかもが凄かった千秋くん達のライブはあっという間に終わってしまい、終演を告げるアナウンスが流れてきた時は祭りのあとのような寂しさと日常では味わえない特別な時間を過ごすことが出来た満足感で胸がいっぱいだった。
だからこそ今は何も考えられそうになくて、千秋くんに感想を送るのは家に帰ってゆっくりこの気持ちを昇華してからにしようと思いながら会場の外に出るとすでに駅へと向かう人で溢れかえっていて、一気に現実に戻される。
流石にたっくんを連れてこの人混みの中を進んでいくのは厳しいだろうなぁ……。
｢たっくん、こっちおいで｣
｢だっこー！！｣
はぐれないようにずっと手は繋いでいるけれどこれだけ人が多いとそれだけでは不安で仕方なくたっくんを抱き上げ端の方に移動していると突然カバンの中に入れっぱなしにしていたスマホが震え出し、誰かから電話がかかってきたのだとわかる。
と言ってもこのタイミングで私に電話をかけてくる相手なんて1人しかいないのだけど。
｢ねぇねの代わりにもしもしできる？｣
｢うん！たっくんがやってあげる！｣
やろうと思えば出来ないこともないけれど体勢的にキツいためたっくんにお願いして電話に出てもらうと大きな声で”もしもし！”とスマホに話し掛け、ドヤ顔をしながら私の耳元にあててくれた。
すると顔を見なくてもわかるほど困惑している千秋くんの声が聞こえ、思わず笑いそうになってしまう。
恐る恐る私の名前を呼んだ千秋くんに”どうしたの？”と返せばほっとしたようにもう一度名前を呼ばれた。
｢大丈夫、合ってるから。ちょっと手が離せない状況だったから弟に出てもらったの。驚かせてごめんね｣
｢む、そういうことだったのか！｣
｢うん。……でね、私たちまだ会場の近くにいるから、｣
こちらも気を付けてはいるけれど、いつものように話されると周りに聞こえてしまう可能性があることを伝えればすぐに彼の声のトーンが下がる。
これぐらいならば大丈夫そうだと用件を聞こうとすれば突然電話の向こうが騒がしくなり、誰かの叫びと共に複数の足音が聞こえてくる。
一体これはどういうことだろうと首を傾げていると慌てたように”ちょっと待っててくれ！”と言われ、そのまま電話を切られてしまった。
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作者名：詩梛 | 作成日時：2020年4月26日 23時
