【完】梅 と 松【梅原裕一郎】

初喧嘩 ページ6

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ごくたまに、うめは機嫌が悪くなる時がある。寝起きはもちろんだけど、他にも色々あるらしい。仕事で上手くいかなかったりしたときや、私にはわざわざ言わないようなことだけど、こうちゃんや江口さんには言うこととか。

私はというと、こうちゃん達に言えて私に言えないことってなんだよ、と若干ふてくされてる。
なんでも言って欲しいのに。

今日もうめは不機嫌モードで帰ってきて、何も言わずにお風呂に入った。せめて理由が聞きたいと思って、お風呂場の前の廊下で座って待った。

「うわっびっくりした。なにしてんの」
『待ち伏せしてた』
「意味わかんねえ」

そう言って私を廊下に放置して歩き出したから後を追いかけた。ソファーに座ったから私も隣に座って話した。

『ねえなんでそんな不機嫌なの』
「別にそんなことないけど」
『こうちゃん達には言って私には言えない不満あるんでしょ』
「だからそんなの無いって。執拗いと怒るよ」
『もう怒ってるじゃん』
「わざわざお前に言うほどのことでもないしいいじゃん。こんなしょーもないことで時間使うな」

今のでカチンと来てしまった。
なんでも言い合えるのが夫婦なんじゃないの？私に言うほどのことでもないなら言えばよくない？言ってもいいじゃんと思った。しかもそれをしょーもないって。

『ふーん分かった』
「分かったならいい」
『じゃあ私いる意味ないよね』
「は？」
『そんなことなら私別にいなくていいし』

それになんだか心の底からイラッとしてしまって、これ以上一緒にいると、いけない言葉を吐き出しちゃいそう。

「どこ行くわけ」
『別に。言う必要ないよね』
「じゃあ勝手にすれば」
『うん、分かった。勝手にする』

財布と携帯、そして台本一式を持って家を出た。鍵は置いてきた。

結婚して、いや、出会って初めての喧嘩をしたのである。

現在深夜1時。ホテルにでも行こうかと思ったけど、探すのもめんどくさい。連絡するのもめんどくさいと思って、アポ無し突撃訪問することにした。

「はーい。えぇ！？どうしたの！？」
『家出してきた』
「家出！？」

突撃訪問したお宅はこうちゃん家。
こうちゃんの顔を見たらなんだか涙が出てきた。
玄関先で泣かれると変な目で見られるからと、とりあえず家に入れてもらった。

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