【完】梅 と 松【梅原裕一郎】

誕生日おめでとう ページ49

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「お疲れ様」
『えへへ、ありがとう』

ラジオの生放送が終わって帰って来た。メールのデータをもらったAがPCを開いて読み始めて、読み終えた頃にはもう次の日の夜だった。

『うめ〜』
「ん？」

ソファーに座ってる俺の隣に座って、頭をこてんと肩に置いた。可愛すぎる。なに。冷静を装うためにお腹を撫でた。

『…ん、あれ、』
「どうした？なんかあった？」
『お腹痛いかもしれない』
「…え。陣痛ってこと？」
『来たかもしれない』

最初は『？』って感じだったのが、だんだん『痛い！』と言うようになった。Aが入れていた陣痛アプリ的なもので記録を付けていくと、病院へ行きましょうみたいなメッセージが来た。

「大丈夫？立てる？」
『今は立てる…』
「タクシー呼んだから、もう大丈夫」
『う、うめ…』

陣痛、そして出産という初めてのことを迎えるA。病院に着いてからは痛みが確実に来ているみたいで、ベッドに蹲るAの腰を擦るのが今俺に出来る精一杯のことだった。

日付けが変わって10日、そして11日。医者に「体力の限界だと思う」と言われた。確かに時間が経つ度に元気が無くなってきて、最終的に帝王切開での出産になった。

オペ室に運ばれるAを見送って、何分か経った頃。
ドアが開いて小さなベッドと共に看護師が出てきた。

「おめでとうございます、女の子ですよ〜」

覗き込むと小さいながらに一生懸命息をして寝ている小さな女の子。愛おしいという感情じゃ足りない。

「奥様もう少しで戻って来られますからお待ちください。では赤ちゃんの状態確認してきますね」
「よろしくお願いします」

見送ってしばらく、Aが出てきた。意識はうっすらある。病室まで行って、ようやく二人きりになった。

「A、お疲れ様。ありがとう」
『無事なら何よりだよ。うめも待っててくれてありがとう。やっと落ち着いたなあ…』
「本当に安心した。どうなっちゃうかと思った」
『ね。あ、今日こうちゃんの誕生日じゃん。電話しよう』
「娘と同じ誕生日か。まじかよ」

西山にテレビ電話をした。

『こうちゃん〜』
「A〜！あ、梅ちゃんも！え！？ちょっとまってその格好と背景…」
『こうちゃんお誕生日おめでとう〜。あのね、さっき産まれました』
「ほんとに！？ほんと！？嘘、めちゃくちゃ嬉しい！おめでとう〜！お疲れ様！最高の誕生日プレゼントだよ！」

画面越しで泣きながら喜ぶ西山を見て、良い同業者をもったなと思った。

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