梅 と 松【梅原裕一郎】

核心 ページ14

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アフレコの休憩中、台本チェックも終わったし暇だなーと思ってたらヨシキくんが来た。

「A〜、水買うから財布持ってきて」
『いや自分で買いなよ』

とか言いつつ持って行っちゃう私も私だ。ヨシキくんのが年上なんだから水くらい自分で買ってよっていつも思う。

「早く終わるかな今日」
『今は順調に進んでるからきっと早く終わるよ』
「終わったら飯行く？」
『行きたい。だれ誘う？こうちゃん？』
「や、二人で行こ」
『二人で？』
「うん。こないだ行ったところ美味しかったからまた行きたいんだよね」
『あ〜美味しかったよね』

自販機の前まで来てほんとに私が水を買った。なんでだよ。

『まじでその辺の水道水でも飲んどけって思うよ』
「失礼だな」
「何言い合ってんの」
「おお、梅じゃん。休憩中？」
「うん。もうすぐ終わるけど」

LINEとかはしてたけど、久しぶりに会う彼に少しドキッとした。
こないだ泊まりに行った時以来かな。

「A終わったら時間ある？」
『え？時間？』
「あー、今日 Aと二人でご飯行く」
『あっ…』

間髪入れずにヨシキくんが言ったからなのか、少し黙った。ちょっとの間が空いて「ならいい。お疲れ」と言って別スタジオに戻ってしまった。私たちも戻ったけど、ちょっとだけ今のことが気がかりでモヤッとしたまま収録を終えてご飯に行った。
いつも通り普通に話をして水のお礼と称してご馳走してもらった。
いつもご飯に行った帰りは家の前まで見送ってくれる。

「じゃあおやすみ、夜更かしすんなよ」
『子どもじゃないんだしちゃんと寝ます〜ありがとうね、ごちそうさまでした』
「また水買ってくれたらいいから」
『しょうがないな〜じゃあまたね』
「あ、待って」
『なに？』

入ろうとしたら腕を掴まれた。なんだろうと思って振り返ったけどヨシキくんは何も言わない。

『どうしたの？』
「なんであんなに梅のこと気にしてんの」
『え？』
「休憩中からなんでずっとモヤモヤしてんの。梅と話してんじゃないんだから二人でいる時は忘れろよ」

モヤモヤしてなかったわけじゃない。それにヨシキくんの言ってることはご最もだ。

『ごめん…失礼だったよね』
「や、そんな深い意味ないけど…別にいいし。またご飯行こう」
『うん。行こうね、ごめん。ありがとう』
「じゃあまた、おやすみ」
『おやすみ』

おやすみって言う時、ヨシキくんの顔が見えなかった。っていうより見れなかった。私は一体何がしたいんだろう。

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