其の伍拾肆 義勇視点19 ページ5
「なにが起きた?」
義勇がそう聞くと桜は苦しそうに答えた。
「拾ノ、型を………」
桜が剣技を使ったことぐらい義勇にもわかっていた。
義勇が気にしているのは桜の体に起きている異変についてだ。
たった一人であの巨躯の鬼と戦っていたのだから疲労はあるだろうが、呼吸の乱れが尋常ではないこと、顔色が非常にすぐれないのが気になる。
いったい桜の身になにが起きているのか。
義勇は桜の呼吸を落ち着かせようと、その背中を優しくさすった。
「あの……」
そこに彼女が近づいてきた。
足音でそれに気づいた桜がゆっくりと顔を上げる。
「怪我は、……あり、ませんか?」
途切れ途切れで言葉を発する桜が痛々しく義勇の目に映る。
「はい、お陰様で。本当にありがとうございました」
深々とお辞儀をする彼女に、良かったと桜は安心したように笑んだ。
その直後、操り糸がプツリと切れたように地面に崩れ落ちそうになった桜を義勇が寸前で抱き止めた。
「桜!!」
焦点のあわない桜は意識が朦朧としているみたいで。
義勇が様子をうかがっていた時、桜の頬に擦り傷があるのを見つけてしまった。
「おまえ、怪我は?」
桜が静かに首を左右に振った。
もう話すこともつらいのだろう。
それに、先程よりも桜の呼吸が荒々しくなり、体の熱も人の体温を軽く超えているようで、服越しなのにその熱が手に取るように感じられた。
そして、その胸は苦しそうに短い感覚で上下している。
こんな姿を見ていても、医療の知識がない自分にしてやれることはなにもない。
こうして支えてやることぐらいしか。
桜が立てる状態ではないのは見てとれるので、義勇は桜の膝下に腕を滑り込ませ横抱きにして立ち上がった。
「降ろして、ください……大丈夫です……」
「喋るな」
話すこともつらいくせに蚊の鳴くような声でそう言ってくる桜が義勇の気に障る。
次は自分で歩くと言い出しそうな桜に義勇はピシャリと言い放った。
桜が震える手で義勇の胸をそっと押して、その腕の中から抜け出そうとしていた。
けれど、目は虚ろで呼吸も乱れ体に力も入らないほど弱っているくせに、なにが大丈夫なのか。
弱々しい力で身じろぐ桜を逃がすまいと、その体を抱く義勇の手に力がグッと込められた。
こんな時ぐらい、遠慮なく頼れと。
「あの……」
急いで帰ろうとする義勇を娘が引き留めた。
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桜花(プロフ) - (あ、打ち間違いが……すみません(^^;)胡蝶、宇髄が呼んでる。珍しいな。二人で任務か? (2021年7月21日 23時) (レス) id: 12e45606b3 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 聞いてますよ。そんな所から長々と話されても困ります。嫌がらせでしょうかあと、2年前じゃないんですか。そんなだからみんなからきら………。ド派手にお邪魔する!胡蝶、ここにいたのか。探したぞ!胡蝶しのぶと宇髄天元様じゃ! (2021年7月21日 6時) (レス) id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» いや、だから言おうとした。炭治郎と出会ったのは三年前のことで…………胡蝶聞いてるか? (2021年7月20日 22時) (レス) id: 12e45606b3 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - それで炭治郎君に会ったんですね!なんであの時私に言わなかったんですかね。気になります。今度から気になることがあったら、言ってくださいね。胡蝶しのぶです。これからも頑張ってください。 (2021年7月20日 6時) (レス) id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» 懐かしいな。あれ以来、おまえはよく頑張っていると思う。 (2021年7月17日 23時) (レス) id: 12e45606b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2021年6月18日 22時