其の弐佰肆拾肆 無限列車編41 ページ44
背中から木の幹に打ち付けられそうになった直前、高速で現れた杏寿郎が背後から桜を抱き止めた。
杏寿郎の、鍛え抜かれた逞しい胸板と腕に支えられ、桜は大木への激突を免れた。
猗窩座の攻撃も上手く防ぐことができた。
ーーそのはずだったのに
ゴバッ
桜はその場で吐血してしまった。
「桜!?」
桜は咄嗟に口を手で覆い隠す。
その時の動作で、体をわずかに動かしただけなのに全身の至る所から血が吹き出した。
やり過ごせたと思っていた体は、風圧により斬り刻まれていたのだ。
その様子を離れた所から猗窩座が不敵な笑みを浮かべて見ていた。
確かな手応えを感じていた猗窩座は、おまえごときが全てをかわせるわけはないのだと。
桜の体から流れ出る血が、抱き締める杏寿郎の隊服をも赤く染めていく。
出血のせいか、クタリと桜の体から力が抜けた。
「桜!!!」
「……………………」
わずかに空気がかすっただけだというのに、あれだけの威力を発揮するというのか。
涼しげな顔で立つ猗窩座を、荒い呼吸を繰り返しながら桜は睨みつけた。
日輪刀を握る桜の手が震えているのに気付いた杏寿郎は、すぐさま桜の膝裏に腕を通し横抱きに抱き上げた。
「煉獄さん!?」
この状態では戦わせられない。
できることなら桜を無傷で帰してやりたかったぐらいだったのに。
守るどころか簡単に桜から引き離されてしまった不甲斐ない自分を杏寿郎は責めた。
あの時もっと注意深く猗窩座を見ていれば、避ける方向にも問題があったと、杏寿郎は苦悶に満ちた顔で傷だらけの桜を見つめた。
「すまない、桜(守ってやれなかった)。君はもう戦いから離れろ」
杏寿郎はそう言うと、一瞬で炭治郎の元に移動すると彼の隣に桜をそっとおろし、すぐさま猗窩座に向き直る。
「あとは俺に任せて君は待機だ。今度こそ動くんじゃないぞ。大人しくしていろ」
杏寿郎は背中越しに桜に命令すると猗窩座との対決の場に戻っていった。
けっきょく杏寿郎の役には立てなかった。
こんなにも早く戦線離脱してしまうなんて。
不甲斐ない自分に桜は拳を震わせた。
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桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» だいぶ放置ですみません!国家資格目指してるんですね。すごいです!私も陰ながら応援しています。もう、あまり需要もないかとは思いますが私はまだまだ鬼滅の刃が好きなのでボチボ頑張って更新していこうと思います。お時間あれば、また遊びにきてくださいね。 (2022年1月10日 11時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 資格取ろうと思っているんだな!俺も国家資格を取ろうと思っている!お互い!勉強!集中!煉獄杏寿郎だ! (2021年10月31日 20時) (レス) @page50 id: e9e5935c56 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» レスと更新が遅くなって申し訳ありません(T ^ T)しばらくこのような状態が続くと思われます。忘れた頃に更新かもしれませんが、引き続き彼らの応援よろしくお願いします( ^∀^) (2021年10月31日 15時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 煉獄さん!頑張れ!俺、煉獄さんを応援します!煉獄さんは強い‥!俺は弱者じゃない!夢主さんもだ!勝手に決めつけるな!猗窩座…!!お前を絶対許さない!竈門炭治郎です!煉獄さん、夢主さん!頑張って下さい! (2021年10月10日 19時) (レス) @page46 id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» 全て言ってしまうとネタバレになってしまうので、あらかた伏せてになるのですが……^^;柱救済で物語を展開していきますので現役引退はありません!とだけ(^-^) (2021年10月4日 21時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2021年9月19日 10時