あなたがたった一度の恋でした５【水と炎で逆ハー】

其の弐佰肆拾参　無限列車編４０ ページ43

「時の呼吸 漆ノ型 霧氷・勇往邁進(むひょう・ゆうおうまいしん)！！」



桜の周囲にある水蒸気が急激に冷凍され、氷のつぶてのように硬くなり、弾丸のごとく猗窩座を襲う。

杏寿郎と桜による挟み撃ちに猗窩座は一瞬だが表情を崩した。

猗窩座が空中に逃げると、杏寿郎の炎と桜の氷が相殺され蒸発を起こし二人の姿を隠した。



「…………」



猗窩座は離れた所に着地して、体を反転させると桜がいる場所をジッと見る。

本当に激戦が始まる前、杏寿郎の影に隠れ怯えていた女と同一人物とは思えない動きだ。

杏寿郎と呼吸を合わせ戦えるほど判断が早く動きも素早い。

猗窩座からすれば桜の技などは簡単に捩じ伏せることができる。

だが、それを何度見ても桜の眼差しは揺るがない。

傷付いても諦めず何度でも剣技を放ってくる。

いつしか猗窩座は杏寿郎との一対一よりも、二人の共闘と闘うことに面白味を感じつつあった。

水蒸気が晴れ、背中合わせで立つ杏寿郎と桜の姿がゆっくりと露になっていく。

猗窩座の姿をとらえた途端、こちらに刀を向ける桜を見て猗窩座がニヤリと口角を上げた。



「おまえ、名は？」

「…………春空、桜」

「……………………」



桜を見る猗窩座の目付きに嫌な予感がして杏寿郎が一歩前に出て庇う。






「桜、では敬意を表して全力でいこう」



一瞬で桜の背後に回り込むと、蹴りと貫手で杏寿郎と桜を引き離す。

杏寿郎と桜は反対側に逃げてしまい、猗窩座は執拗に桜ばかりを狙う。



(しまった！！！！！)



杏寿郎がそれに気付いた時には、すでに桜とはかなり距離を離されてしまっていた。

猗窩座の対象は完全に桜に変わっていた。



「破壊殺 脚式 飛遊星千輪」



猗窩座は下から上に突き上げるような蹴りで、さらに八の字を描くような攻撃を桜に容赦なく叩き込む。



「時の呼吸 伍ノ型 桐一葉・振臂一呼(きりひとは・しんぴいっこ)！！」



いくつもの鋭い刃の風で防御壁を作り出す。

さらに、防ぎきれなかった攻撃を刀身で受け止める。

だが全てを押さえきることはできず、桜の体は勢いよく吹き飛ばされてしまった。

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