あなたがたった一度の恋でした５【水と炎で逆ハー】

其の弐佰肆拾弐　無限列車編３９ ページ42

「破壊殺」



「炎の呼吸 壱ノ型 不知火！！」



それよりも先に杏寿郎が間合いを詰め、炎が纏った日輪刀を逆袈裟斬りすることで桜への攻撃は阻止された。

猗窩座は一度着地し、やっと来たかと言わんばかりに杏寿郎のことを好奇の眼差しで見ていた。



「今まで殺してきた柱たちに炎はいなかったな！そして俺の誘いに頷く者もなかった！なぜだろうな！？同じく武の道を極める者として理解しかねる！選ばれた者しか鬼にはなれないというのに！」



猗窩座の注意が杏寿郎にそれている、桜はすかさず剣技の構えをとった。

この隙をつく。



「時の呼吸 伍ノ型」



ギロリと猗窩座の目が桜に向けられた。



「そういえば、おまえの呼吸も初めて見る呼吸だな」

「桐一葉・振臂一呼(きりひとは・しんぴいっこ)！！！」



風が鋭い刃となり台風並の威力がある斬撃を連続で繰り出す。



「破壊殺・空式」



猗窩座の好奇の眼差しは珍しく桜にも向けられた。

猗窩座も最初こそ馬鹿にしていたが、恐怖心を取り除いた桜は柱に相当するような技と動きを見せてくれる。

猗窩座は空中で体を捻ると、その体勢からいとも簡単に拳圧を乱打することで桜の作り出した風をどんどん相殺していく。

猗窩座の技による風圧で肌が切れて血が流れても、桜は気に留めることもなく刀を振り続けた。



「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり！」



桜を援護するように杏寿郎が技を放つ。

桜が作り出した風の隙間をかいくぐり、杏寿郎と桜を中心に炎が渦を巻きながら拳圧を薙ぎ払う。

その際も、杏寿郎は己の背中で桜を守ることを忘れない。

猗窩座は、申し分ない動きをする二人を相手に戦いを愉しんでいた。



「素晴らしき才能を持つ者が醜く衰えてゆく！俺はつらい！耐えられない！死んでくれ！！」

「そんなつもりはないっ！！！」



桜を連れて仲間と一緒に帰るのだから。

桜も殺させはしない！


杏寿郎は炎の中から飛び出すと刀を大きく振り上げ猗窩座に斬りかかった。

それを迎え撃ち杏寿郎と激しく攻防する猗窩座。

今は目の前の杏寿郎にしか目に入っていない猗窩座の背後を桜がとる。

もう、大人しくただ守られているだけの桜ではなかった。

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