あなたがたった一度の恋でした５【水と炎で逆ハー】

其の弐佰拾捌 無限列車編１５ ページ18

だが、これで終わりではなかった。



「もう一匹いるな」



そう言いながら仲間に視線をやった杏寿郎の目がハッと大きく見開かれた。



「桜はどうした！？」

「え？あっ……いない！！？いつの間に…………」



杏寿郎に言われ炭治郎たちもようやく桜の姿がないことに気が付いた。

キョロキョロと辺りを見回すが、やはりいない。

炭治郎たちもボーっとしていたわけではないが、杏寿郎の技や、そこから繰り出された炎で鬼の体が爆(は)ぜた爆発音に気を取られていた。

まさか、あの間に桜までもが無限列車に巣食う鬼の血鬼術に捕らわれてしまったのかと珍しく杏寿郎が落ち着きを失う。

桜に限ってそんなはずはないと思いたいが。

目を離した隙にこんなことになっていようとは。

杏寿郎は手の甲の血管が浮き出るほど日輪刀の鞘をギリと強く握りしめた。




だが、とにかく今は残った鬼の討伐を優先させなければならない。



「！！まさか……！？」



何かを思い付いた杏寿郎が駆け出し、



「煉獄さん！？いったいどうしたんですか！？」

「え？なになに？どうしちゃったの？？？」

「？？？」



よくわからないまま、杏寿郎の後を慌てて追う炭治郎と、さらに今の状況を飲み込めていない善逸、伊之助が炭治郎に続いた。









杏寿郎が踏み込んだ隣の車両も火事場のような騒ぎだった。

どうやら、もう一つ向こうの車両から逃げてきたようだが全員が何か恐ろしい“もの”でも見たような表情だ。

杏寿郎は逃げ惑うその中の一人を捕まえた。



「なにがあった！？」

「ばっ化け物がっ……！！！」

(やはりそうか……！)

「！」
「！」
「！」

「まだ人が残されてっ………女の子がっっ！！！！」

(女の子……………桜か！？)



まさか、いち早く他の鬼の気配を感じ先走ったのでは。

鬼の巨躯に隠れ、おまけに轟音や爆煙にも紛れて気付けなかった。

桜があの瞬間に移動していたことに。

杏寿郎が珍しく取り乱した様子で貫通扉を開けた。



(落ち着け……桜なら大丈夫だ！)



あの子は継子なのだ。

普通の鬼相手なら桜は負けはしない。

杏寿郎は自分に言い聞かせながら、次の車両へと続く貫通扉を勢いよく開けた。

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