【10】 ページ10
*Side：健永*
千賀健永、19歳。
ダンス教室の講師と居酒屋のバイトを掛け持ちしてます。
高嗣は何て言ったか知らないけど、高嗣も居酒屋のバイトしてるよ。
俺がこの町に来て、あっという間に時が過ぎて…
高校を卒業して、気付けば来年は成人式だって。
と言っても俺早生まれだから、成人式の日ってまだ未成年だったりするんだけど。
この町に来てから、色んな人と出会って、その誰もが優しくて…
もうここへ来る前のことが思い出せなくなってきた。
きっとその方がいいのかもしれないって、最近思うようになった。
「うわー！なんか慣れない！ゾワゾワする！」
さっきから高嗣は一人で大騒ぎ。
理由は勝利が太兄を“義兄さん”って呼んでるから。
「なんかヤダ。絶対変だし…。」
食べ始めてもまだ一人でブツブツ言ってる高嗣。
「そのうち慣れるって。」
「いーや、ぜっっったい慣れない！」
ちょっと知りたくなった。
勝利が太兄を“ライオン丸”って呼ばなくなった理由。
「ふふっ、健永は昔から正直だね〜。」
「えっ？」
「知りたいんでしょ？」
さやねぇに心の中を見られた気がしてビックリした。
「太輔はお父さんの命の恩人なの。」
「それとどういう関係があるの？」
「お父さんが倒れた時ね、お母さんはもちろん、私も勝利も怖くて、何もできなかったの。」
「でも義兄さんは、すごく冷静に救急車を呼んで、病院まで付き添ってくれたんだ。」
「それから勝利は太輔をライオン丸って呼ばなくなったよね。」
「まぁね…。」
「見直したでしょ？私の旦那さん。」
「姉貴、調子に乗りすぎ。」
太兄はいざというときはすごく頼りになる。
それは今も昔も変わらないみたい。
「太兄、たまにはいいとこあんじゃん。」
「俺が何だって？」
「うぉっ！ビックリした！」
高嗣、ビックリしすぎて箸落としてるよ。
「太兄、珍しいね。虹の家は？」
「今から戻るよ。で、俺が何だって？」
「ううん、何でもない。」
怒ると怖いから、何も言わないでおこう…。
「あ、そうだ。お前ら、明日ヒマだよな？」
「勝手に決めつけないでよ！」
俺達にも俺達の都合が…
「じゃ明日、虹の家に集合。」
って、聞いてはくれないんだね。
「遅れたら、ぶっ飛ばすからな。」
そう言って太兄は虹の家に戻って行った。
「なにあれ？」
「さぁ？明日、行けばわかるんじゃない？」
太兄は、いざというときは頼りになる。
俺はまたそれを確認することになるなんて思わなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 289人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：浅緋
| 作成日時：2017年1月28日 0時
