【04】 ページ4
*Side:裕太*
玉森裕太です。
二十歳の大学生。
あの頃とは少し違う虹の家。
「裕太、おはよー。」
あの頃と変わらないことと言えば…
朝、食堂に行けば、太兄がいることかな?
「太兄、おはよ?」
あれ?今日の太兄…
「何かいいことでもあった?」
「いや、別に。なんもねーよ。」
絶対にいいことあったよ。
だって太兄、嬉しそうな顔してるもん。
「早く食えよ。遅刻するぞ。」
「今日は休みなの。」
「あっそ。じゃあ片付かないから、早く食え。」
「わかってるよ。いただきます。」
太兄のぶっきらぼうな言葉遣いは、子供の頃から今も変わらない。
だからたまに誤解されたりするけど…
それでも僕にとって、太兄は“優しいお兄ちゃん”で、
この関係は今までも、これからもずっと続いて行くと思う。
太兄が結婚して、この家を出るって聞いた時、ちょっとだけ淋しかった。
ミツ兄やわったーみたいに遠くへ行ってしまうわけではなくて、
“ただ寝る場所が変わっただけ”
って、太兄は言ったけど…
誰よりも一緒にいる時間が長かったから、最初の頃はすごく変な感じがした。
「ゆーた、知ってた?」
「なに?」
ちなみに僕はこの家の子供たちから、“ゆーた”って呼ばれてる。
「たいぴー夫婦喧嘩したんだって。」
夫婦喧嘩ねぇ…
「だから、ちげーって言ってんだろ?」
「じゃあ、なんで遅刻したの?昨日も今日もじゃん!」
太兄が遅刻なんて珍しい。
「うっせ。大人には大人の事情ってのがあるんだよ。」
最近の太兄の口癖。
「蒼生、樹生、遅刻しちゃうよ?」
「「やっば!!いってきまーす!!」」
バタバタと家を出て行く双子の小学生。
2人はまるで…
「昔の高嗣と健永みたいだね?」
「裕太もそう思う?」
「うん。2人見てると、つい思い出すよね?」
「まぁな。」
「で、遅刻の本当の理由はなんなの?」
「まだ聞く?」
「うん。」
「彩の具合が悪いから、ちょっと様子見てた。」
「ふーん…そうなんだ。」
あれ?今の…
「裕太、聞いてる?」
「え?ごめん、なに?」
「だから、幼稚園組送ったら、彩の付き添いで病院行くから、ここの手伝い頼んでいいか?って聞いたの。」
「うん、いいよ。あとはやっておくから、早く行ってあげて。」
「ありがとな。今度埋め合わせるわ。」
一瞬、太兄に“赤い”イメージが見えた。
“赤”はミツ兄の色なのに…
どうしてだろう…?
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作者名:浅緋 | 作成日時:2017年1月28日 0時