【17】 ページ17
*Side:太輔*
「よし…。」
幼稚園組のチビたちは、もうすっかり夢の中。
今日の仕事はこれで終わり。
「太ちゃん、もう帰る?」
荷物を持って階段を下りると、Aに呼び止められた。
「あぁ…。」
よっぽどのことがない限り、ここに泊まることはなくなった。
「あのさ、宏のことなんだけど…。」
「今はいい。」
「えっ?」
「明日…、明日ちゃんとミツに聞くから。」
「そう…わかった。」
今度こそは絶対にミツの口から聞き出すからさ。
「明日、何時にみんな来るの?」
「あ…。」
やっべ、特に時間は決めてない。
「もしかして、時間は決めてないとか?」
「その“もしかして”なんだけど…。」
「太輔、いくつになったら、その悪い癖直るの?」
「これでもマシになった方じゃない?」
「・・・・・。」
Aから盛大な溜め息が出たのは言うまでもない。
「しっかりしなきゃダメだよ。いつか太輔だって、“パパ”なって、さやちゃんと子供を守っていかなきゃいけないんだから…。」
「はいっ!わかってます!」
いつかの未来じゃない。
「ホントにわかってるの?」
「わかってるよ、わかってる。」
あと数ヶ月後、俺は本当に“父親”になるんだ…。
「あれ?太兄、帰るの?」
「当たり前だろ。俺の家はここじゃないし。」
「ミツ兄がいるから、泊まるのかと思った…。あ、さやちゃん具合悪い?」
「だから、早く帰ってやらないとな。」
今日くらいは早く帰って、お祝いしたい。
って言っても、この時間じゃせいぜい彩の好きなケーキくらいしか用意できないけど…。
「あ、そうだ。裕太、明日いるか?」
「明日?どうして?」
「みんな来るから、裕太もいろよ。」
「学校…。」
やっぱり…
俺らの中で唯一の大学生だもんな。
「サボれ、サボれ。」
明日くらいサボっても問題なくね?
「ちょっと太ちゃん!」
「みんないるのに、裕太だけいないのおかしいじゃんか。」
みんないなきゃ、意味ないんだって。
「あ…明日休講!」
「裕太、絶対ちがうよね?」
はぁ…。
この人、最近厳しくない?
「ホントだもん。明日、休講だもん。」
「あとで翔馬くんに叱られても知らないよ。」
「A、今回だけは許してやって。」
またまた大きな溜め息をついて、Aは事務室へと入って行った。
「翔馬くん、怒ると怖いよ?」
「2人でひたすら“ごめんなさい”だな。」
「うん…。」
みんな一緒じゃなきゃ意味がないから…
裕太、ごめんな。
289人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:浅緋 | 作成日時:2017年1月28日 0時