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*Side:裕太*
「裕太くん、今日もありがとうね。」
PM8:30
今日のバイトはおしまい。
「お疲れ様でした。」
オッコさんにそう挨拶をして、お店を出る。
今日は結構忙しかったから、少し疲れた…。
「ふぅ…疲れた。」
そんな言葉が自然と口をついた。
こんな時、自転車に乗る練習をしておけば良かったって、本気で思う…。
「あ、まただ…。」
“赤いイメージ”
朝からずっと“赤いイメージ”が浮かんで頭から離れない。
家に近付くにつれて、そのイメージはどんどん濃くなっていく…。
なんでだろう…?
*****
「ただいまー…。」
玄関を開けるといつもの倍くらいうるさかった。
蒼生と樹生が今日も騒いでる…。
「「ゆーた!おかえり!」」
玄関まで走って出てきて、またハモってる。
2人はホント…
いつも元気だね。
「ただいま。蒼生も樹生も、もう寝る時間じゃないの?」
「「まだ、ねむくない!」」
「でも寝なきゃダメでしょ?A先生に叱られるよ。」
ここ数年で気付いたこと。
Aは怒るとすごく怖い…。
「だってさ…」
「ミツにーちゃんがさ…」
え?ミツにーちゃん…?
「朝起きたら、超でっかいって!」
「ゆーたよりデカいんだぞって!」
「ちょっと待って。ミツにーちゃんって誰?」
僕の間違いじゃなければ…
「ゆーた知らないの?」
僕もよく知ってるあの人のこと…。
「食堂にいるよ。早く来てよ!」
「え?あ…ちょっと待って…。」
双子に手を引かれて、食堂に入る。
「裕太ー、元気だったか?」
「ミツ兄…?」
「なんだよ、その顔。」
「どうしているの?」
「いちゃ悪いか?」
「ううん、悪くない…。」
やっぱり“赤いイメージ”はミツ兄のこと?
でも、なんかちょっと違う…。
「裕太、おかえり。お風呂あいてるよ。」
「うん、すぐに入るね。」
「蒼生と樹生は、まだ起きてるの?早く寝なさい。」
ほら、早く寝ないと怒られるよ。
「ねぇ!ホントに朝起きたら、ゆーたより大きいの?」
蒼生は昔の健永みたい。
「そんなのうそに決まってんじゃん。」
樹生は高嗣に似てるかな。
「マジだって。でもデカいのは、ほんの一瞬だから早く起きないと見れないぞ。」
「「おやすみなさい!」」
バタバタと階段を上がる双子。
「はい、おやすみー。」
双子の後ろ姿に、ミツ兄はそう声を掛けた。
「ミツ兄、しばらくいるの?」
「あぁ、しばらくいるよ。」
ミツ兄じゃない赤いイメージ。
一体、なんのことだろう…?
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作者名:浅緋 | 作成日時:2017年1月28日 0時