【12】 ページ12
*Side:太輔*
“おめでとうございます。”
つい数十分前に病院でそう言われた。
彩の予想通り、俺達に赤ちゃんが出来たわけで…
「女の子だったら彩に似た方がいいんじゃね?」
「太輔に似た男の子でもいいよ。」
まだ性別はわからないんだって。
「パパに似て、色黒でくせっ毛でもいいからね〜。」
「どういう意味?」
「“元気に生まれてきてね”ってこと。」
「なんだそれ?」
そんな他愛のない話をしながら病院からの帰り道を歩く。
「仕事、無理すんなよ。」
「うん、お母さんには一応報告しておくね。」
今、彩は実家の定食屋を手伝ってる。
前の仕事もハードだったけど、定食屋さんも立ちっぱなしだから、結構ハードだよな。
「重い物を持ったり、走ったりもダメだから。」
「わかってるよ、太輔は心配性だね。」
「だって、すぐ無理すんじゃん。」
世話焼きで姉御肌の俺の奥さん。
ほっとくとすぐに無理をする。
「しないよ。約束する。」
「絶対だからな。」
「はいはい。」
そんな彩だから、こんな足りないものだらけの俺と結婚してくれたんだと思う。
〜RRRRR〜
突然、鳴り響くスマホの着信音。
「先に入ってて。」
って彩に伝えて、ディスプレイを確認する。
「渉?」
表示されてたのは、渉の名前。
なんだ?
「もしもし?」
『太輔、久しぶり。今、平気?』
「あぁ、平気だよ。めずらしいじゃん、なんかあった?」
メールはよくするけど、こうして声を聞くのは久しぶりだった。
『ミツが来た。』
「ミツ?なんで?」
『本人は休みもらったから来たって言ってたけど…』
「けど?」
『たぶん違うと思う。』
アイツまた何かあったんだな…。
「で、どうすんの?」
『明日、虹の家に行くから、みんなにも声掛けといて。』
「はぁ?ミツ来んの?」
『今、そっちに向かってるはずだから、明日俺が行くまで引き止めておいて。いい?』
「なんかわかんねーけど、わかった。」
店が混んできたからって、渉との通話は一方的に終わった。
急に戻って来るなんて、今度は一体何があったんだよ?
裕太には帰ってから言えばいいから、あとの3人に連絡しなきゃだな。
なんて思いながら、店の扉を開けたら、タイミングよく高嗣と健永がメシ食ってた。
2人に明日虹の家に来るように伝えて、店を後にする。
俊哉にもメールを送って、ミツにも連絡するべきか?
ん?
ったく、アイツは何してんだよ?
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作者名:浅緋 | 作成日時:2017年1月28日 0時