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Episode:112 ページ16

Side:優吾

駐輪場にバイクを停めて、講義室に向かう。

「ゆーごっ!」

後ろから軽快な足音で近づいてくると思ったら…

「大我か、なんだよ?」

「なんだよ?って、ひどくない?」

あーはいはい。

「久しぶりじゃない?バイクで来んの?」

「やっと許しが出たんだよ。」

「彼女の?」

「ちげーよ!」

「ふーん。顔、緩んでるけど、何かいいことあった?」

「はぁ?」

「いつもより1.5割増で、ヘラヘラしてるよ?」

1.5割増ってなんだよ?

「弟、昨日帰ってきたんだよ。」

「嘘!?退院したの?」

「嘘ついて、どーすんだよ?マジだよ!」

「だから、ヘラヘラしてんのね。」

「してねぇよ。」

「お祝い、持っていかなきゃね。」

「いきなりかよ!?」

「いいじゃん、いいじゃん。」

でたよ、大我のマイペース。

「で、いつにしようか?」

「まだ、いいって言ってねぇよ。」

「いつならいい?」

「姉貴に聞いてみるよ。まだ昨日帰ってきたばかりだからな。」

北斗、人見知りだし、あんな風になってからは、ホントに俺たち姉弟と、病院関係者としか会ってない。

「よろしくね、優吾。」

「わかったよ。」

「優吾の家族に会えるの楽しみだ。」

「お前さ、なんでそんなにウチに興味あんの?」

「俺さ、一人っ子だから、姉弟って、めっちゃ興味あんの。」

「へぇ、大我一人っ子なんだ?」

「そうだよ。おまけに両親共働き。もう慣れたけど、ちっちゃい時は結構淋しくてさ。」

もちろんだけど、初耳。

「だから、兄弟欲しかったんだよね。」

うちは樹と北斗が生まれてから、お袋は仕事を辞めた。

“ただいま”って言えば、“おかえり”って返ってきて、姉貴も居たから、常に遊び相手もいた。

寂しいなんて感じたことがなかった。

よくよく考えたら、今もそうだ。

親父とお袋はいないけど、ウチに帰れば、みんながいるから…

寂しいって思ったことない。

「じゃあ、今日は飯行けないね。」

「なんだよ?メシの誘いかよ!?」

「さっき言ったじゃん。どーせ帰っても一人なわけ。」

あーそうか…。

「でも、今日はやめとくよ。」

「近いうちにメシ行こうぜ。」

だいたい、4人姉弟っていうと、周りからは、“すげぇ”だの、“親頑張った”だの言われて…

結構うぜぇって思ったこともあったけど…

今は、それで良かったって思うし、

姉弟いっぱい作ってくれた両親に感謝してる。

だってさ、一人じゃ耐えらんないから。

俺一人だったら、絶対もう潰れてる。

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作者名:浅緋 | 作成日時:2021年10月2日 22時

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