【名探偵コナン】それ、疲れません？3【降谷零】

日はまた昇る ページ1

懐かしい、夢を見た。



未来を語り合った友と、

夕陽が傾く公園で、

過去を笑いあった。




太陽のように眩しい奴の笑顔が、

脳裏に焼き付いて離れない。

あまりの眩しさに目を細めた。

そして、

瞬きをしたと同時に、





風景は変わる。





薄暗いビルの屋上で、

友は、

左胸を撃ち抜き、



死んでいた。






「疑わしきは罰しろ……だったか？」




憎い。

憎い。


この男が、

死ぬほど憎い。




いや、

それよりも、







(憎むべきは、自分、か…)





自身の周りに広がる血の海。

正義のため、この国のため、

多くの人間を犠牲にし、

血の海を築き上げ、

歩き続けた。


それは徐々に己の足取りを重くし、

血溜まりから這い上がってきた屍は僕の耳元で言うのだ。





「ニクイ」

「ギゼンシャメ」

「ムリョク」







「ゼロ」




「オマエノセイダ」






今日も今日とて、

血の海に呑まれていく。

抵抗する気なんてさらさらない。

それが僕が背負うべき業であることはわかっている。


慣れた鉄の臭いが鼻をかすめ、

ズルズルと引きずりこまれていく。


そこで初めて思う。








(……疲れた、な…)




いくら正義のために犠牲を増やしても、

この国のために友を見捨てても、


それが本当に正しいことなのかはわからない。


本当に、

本当にたまに、

全てを投げ出して、

楽になりたいと、



未来を語り合った友の元へ行きたいと、


強く思うことがある。



だから今日も、

血の海に、









「……っ！？」



突然鳴り響いた着信音に、体が反応した。

……自分がここまで眠りこけるなんて珍しい。

重たい体を起こし、

ガンガンと痛む頭を押さえ、

ベルモットからだろうとため息が出た。


ろくに画面も見ず、

通話ボタンを押し、耳に当てた。




「………はい…」

『"……あ、梓さん？"』

「……Aさん？」

『"………あれ？…"』

「僕は安室ですよ？」

『"……………マジかよオイ"』



『ウヒャア…やらかした…』と心底慌てる彼女の声がじわりと心臓に響く。


『"すいませんめっちゃ間違えました、うっわすみません"』

「ハハッ…いいですよ…」


やはり、






(彼女の声は心地いい…)



痛んでいた頭がスッキリして、

ダルい体が軽くなって、



「ありがとうございます。元気出ました」

『"え、なんで？"』

「Aさん」





また、




「おはようございます」





頑張れる。

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