05.元カレは道化師 ページ6
五条くんの叫びの後、何故か硝子ちゃんが我慢できないとでも言うように肩を揺らしていた。終いには「はー、Aってやっぱ飽きないわ」と細めた瞳で言う。よく分からないけど、硝子ちゃんに褒められた気がするので素直に喜んでおく。
「…。どこ」
「ん？」
「だから、そのカフェってどこだよ」
五条くんは何故かそのカフェに興味があるらしい。「渋谷のカフェだよ」と教えて続けて店名を答える。五条くん、甘いもの好きだしカフェ開拓でもしたいのかな。それならもっと有益な情報を教えてあげよう。
「五条くんなら、キャラメルラテとかいいんじゃないかな！あと、アールグレイのスコーンが絶品だよ。超オススメ」
「A、五条はカフェの情報が聞きたいわけじゃなさそうだぞ」
「へ？」
五条くんは「硝子、勝手な事事言うなよ」と唇を尖らせて拗ねた横顔を見せつつ、「で、誰」と今度はまた違う質問を投げかけてくる。
「その、店員って誰」
「結構シフト入ってる大学生の店員さん！前からかっこいいなあとは思ってたんだけどね。一昨日その人とプライベートで遭遇して、向こうも私のこと認識してくれてたから話し込んだら、素敵だなぁって惹かれちゃって。もう大好き」
「…。俺と付き合ってた時からかっこいいって思ってたのかよ」
「もう時効でしょ」
「俺の方がかっこいい」
「今の私には彼が1番カッコよく見えるから」
彼の姿を思い浮かべてうっとりと答えれば、五条くんは納得できてなさそうに奥歯を噛み締める。
五条くんは自分が一番イケメンじゃないと満足できないタイプなのだろうか。1年間付き合ってたけど、そんな事は初めて知った。
一方の私は恋愛体質。好きな人をつくろうと意識しているわけではないけど、常に好きな人がいる状態。五条くんと別れたから、新しく好きな人ができた、それだけ。
五条くんはやけに不機嫌だし、硝子ちゃんは愉しそうに見守っているし、夏油くんはヘッドホンで自分だけの世界に入り込んで迂闊せずだし。教室は中々カオスな状態だ。
五条くんは頬杖ついてこっちを見ないまま、「なあ」と呼び掛ける。
「俺は？……俺のこと、もう好きじゃねーの」
不安定な声に、親指でグットサインを見せながら答える。
「安心して！とっくに冷めてるから！」
言葉通りの吹っ切れた表情で言えば、「お、俺だって冷めてるし！！」と決死の叫びと硝子ちゃんの笑い声が響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1110人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨宮 - こういうオリ主人間味があって好きです、面白かったです。 (12月6日 19時) (
レス) @page8 id: ec3fa44d4f (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - ゆずなさん» ありがとうございます！更新は不定期ですが、少しずつ頑張っていきます。 (11月3日 18時) (レス) id: fadfb7919a (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - あやさん» はじめまして。恋多き女故に終わった恋に執着しない夢主を五条はどうするのか…。お楽しみいただけると幸いです。 (11月3日 18時) (レス) id: fadfb7919a (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - 霧雨 音葉さん» 初コメありがとうございます。素直になれない五条を書くの、私自身も楽しんでいます。笑 (11月3日 18時) (レス) id: fadfb7919a (このIDを非表示/違反報告)
ゆずな - この作品めっちゃ好きです！続き待ってます( *´꒳`* ) (10月31日 22時) (レス) @page7 id: f39121074c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おもち | 作成日時：2023年10月18日 21時
