友情の先にあったもの。(ymin)

# ページ12

IN side


「私だったら？想像してみて。私とキスしてるところを」


髪を梳いていた山田の手がウチの両頬に降りてきてフニフニの柔らかい手で包みこまれた。

山田の言葉を頭で理解する前に、想像をする時間をもらう前に、現実として我が身に降りかかる。

頬を包まれている手も、触れあう唇も柔らかい。その感触がより一層山田とのキスにリアリティを与える。そのことに嫌悪感なんて少しもなくて。


でも、状況が全く分からない。
なんで今山田とキスしているんだろう。
2人とも酔っぱらっているから？
あ。慧、これがファーストキスだ。
閉じられた山田の目。
改めて近くで見るとまつげ長いな。
山田は他の誰かと同じことをしたことがあるのかな。


キスをされている数秒の間に思考が無数にとっちらかってく。


「いのおちゃん目閉じて」


山田の指に瞼をなぞるように撫でられて言われるがままに目を閉じるともう一度重ねられる唇。

後頭部に手を添えられて重ねるだけだった口づけがどんどん深くなっていく。

山田の舌が、つい逃げてしまうように奥へと引っ込んだ慧の舌を絡めとる。


口内を荒らされるとゾワリとした心地良さが駆け抜けて、山田の動きに応えるように自分からも気がつくと舌を絡めてた。


「ん…ぅ、」


髪を撫でる手とは反対側の手がウチの脇腹をツツツと撫であげるから、くすぐったくて鼻にかかった声が漏れた。

なんか、りょうちゃん慣れてる。

そりゃそうだよね。慧と違って今まで彼氏だっていた。キスしたことないわけが無い。


今ウチがされたようにりょうちゃんが男の人にキスされてるところを考えてしまった。

なんか、ヤダ。

黒いモヤが胸中に広がって、なんだか苦しくて、山田の胸を押し返してキスを辞めさせた。

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