129話 ページ30
｢ああ、結果的にはそうなるかもなあ。｣
千空の顔は、少しうつむき加減になり、その表情は暗く見えなかった。
｢あの日は、山下しの風が吹いていた。｣
｢近くには硫酸の湖があってな、そこから丁度、｣
｢石神君。｣
Aが遮るように言った。
｢私、難しい理屈は分からないの。｣
｢結論だけ、言って。｣
──────｢だから、今はこの炭酸ナトリウムに…。｣
｢だから！私、難しい理屈は分からないの！｣
｢やり方だけ教えて！｣
｢ああ？ったく、しょうがねえなあ。｣
ああ…。違ぇなぁ。こいつは別に変わってねえ。
そりゃ、何千年も経ってんだから、知らない事くらいあって、当然じゃねえか。
千空は静かに顔を上げると、真っ直ぐにAを見つめ返した。
｢やってねえ。｣
｢…え？｣
｢俺たちは、殺してねえ。｣
｢毒ガスも、作ってねえ。｣
｢自然物だ。｣
｢自然に発生した毒ガスが、ゴーザン達のいる所に蔓延して、理由は分からねえが、落ちた。｣
｢これが、あいつらの死の真相だ。｣
…自然物。
じゃあ、あの死は、仕掛けたわけでもなんでもなく…。
事故。
｢そう、そっか…。ねえ、石神君…、もう1つ、いいかな。｣
｢その毒ガスは、苦しいの…？｣
｢…いや、現代でもしゃがんだ瞬間死んでたっつう例がある。｣
｢恐らく、何も分からねえうちに、逝った。｣
｢…そう……そうなんだ……。｣
ぽたり
ぽたり
Aの目から静かに涙が出てくる。
ゴーザンさん達の死が、無くなる訳でもない。
それで、ゴーザンさん達の、何が変わる訳でもない。
それでも、私は、石神君達が、仕掛けた訳では無いと知って、ゴーザンさん達が苦しんでないと知って、こんなにも、気持ちが軽くなってしまった……。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 179人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Jane Doe(プロフ) - 樹乃さん» 樹乃さん！コメントめちゃめちゃ嬉しいです＼(^o^)／ありがとうございますす♪お気持ち凄く嬉しいです！この先長いですが、ぜひこれからもお付き合い下さい。 (9月30日 11時) (
レス) id: 980e4647fc (このIDを非表示/違反報告)
樹乃(プロフ) - こう...文章が凄く綺麗だと思いました(語彙力) (9月30日 9時) (レス) @page15 id: df66a330f6 (このIDを非表示/違反報告)
Jane Doe(プロフ) - あ、ありがとうございます！本当に、コメント、めっちゃ励まされますね！ぜひこれからもお読みください！ (2023年3月15日 10時) (レス) id: 7151efa53f (このIDを非表示/違反報告)
メウ(゜ロ゜) - 神作品にであってしまった！更新がんばってください！ (2023年3月15日 10時) (レス) @page46 id: c71eec4ba7 (このIDを非表示/違反報告)
Jane Doe(プロフ) - まじですか！ちょーやる気出ました!!ぜひこれからも読んでってください!! (2023年3月14日 15時) (レス) id: 7151efa53f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Jane Doe | 作成日時：2023年3月9日 3時
