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社会人になってだいぶ経った頃。
といっても、大人達からしてみれば
まだまだ入りたての未熟者、というべき頃だろうか。
残業を終えた俺は
コンビニで少々のご飯とビールを数本買って、トボトボと帰路についていた。
なんとなく、毎日がつまらなかった。
ただ雲のない空をボーッと見つめたり、
道に転がった石ころを蹴っ飛ばしてみたり。
ただ、澄んだ宮城の空
星だけはいつも綺麗だった。
何かを訴えるわけでもなく、ただ光っている。
その時、
「そこのお兄さん!」
と 突然大声で呼ばれ、ギクリとする。
そもそも自分を呼んでいるのかも分からなかったが
俺は反射的にそっちを向いてしまっていた。
「(………俺か?)」
自分ですかね、とジェスチャーをすれば
「そうそう!」
なんて叫びながら、ブンブンと手を振ってきた。
声からして、女の人なのは分かったが
思い当たるような知り合いでもなさそうだった。
酔っ払いか…? と面倒に思いながらも
彼女が座っていたベンチに近づいてみれば
「一緒に飲みませんか?」
と、缶ビールを半ば無理矢理押し付けられる。
最近塗装されたのか妙にピカピカのベンチから
化学物質っぽいペンキの匂いが鼻を掠めた。
「いや、あの、」
「ここで会ったのも何かの縁ですし!」
ほらほら!柿ピーもありますよ!
なんて上機嫌におつまみまでくる彼女の周りには
空であろう数本のビールが落ちている。
…ビンゴ。酔っ払いだ。
「あの、俺…」
「お名前は!なんと言うのですか!」
初対面の、ましてやただの通行人に名前を尋ねるなんて… と呆れながらも、
「……松川一静、」
なんの抵抗もなく答えた俺は、たぶん彼女と同類。
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るとぴ(プロフ) - 同期になりたい人生だった (2019年8月28日 23時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:PON酢 | 作成日時:2018年10月28日 18時