不思議な魅力 ページ24
「ここに座って」
お風呂上がりのバンビを居間へ連れていき
ドライヤーを当てた
始めのうちこそ怯えた様子を見せていたバンビも、今は大人しく頭を預けている
元々お利口さんな子なのだ
日に焼けた畳の上、膝を抱えた体育座り
その体勢がしっくりくるのか
玄関先でも同じ格好をしていた
着せてあげたネイビーのバスローブに身を包み
違和感なくそれを着こなす姿は
やはりどっからどう見ても大人の男性なのに
背中を丸めて座る後ろ姿が
何とも可愛いらしいから不思議だ
「そう言えばこの2日
バンビは何を食べてたの？」
聞こえるように
耳元に顔を寄せ聞いてみた
「えっと...木の実」
「木の実？」
「うん。それはまずくなかったから」
「そっか」
"まずくなかった"
恐らく人間になって味覚が変わり、今まで食べていた物は食べられなくなってしまったんだろう
「今日はお弁当があるから
きっと木の実より美味しいと思うよ」
「ホントに？」
「うん」
大の大人が、二日間木の実しか食べていないなんてさぞかしお腹が空いただろうと思い
慌てて髪を乾かす手を急がせたのに
「...ん？バンビ？」
当のバンビは
こっくりこっくり、船を漕ぎ出した
「なに、眠いの？」
「ん...」
後ろから覗き込んだ私に
一瞬うっすら目を開けるも
すぐにまたトロンと瞼を蕩けさせるバンビ
まぁ、無理もないか
人間の目を通して見る世界は
きっと何度もバンビを驚かせたに違いない
「ほらバンビ、寝るならベッド行こ？連れてってあげるから」
「ん...」
もうほとんど意識のないバンビの手を引いて立ち上がった
瞬間感じた身長差にまた少しドキッとしたけど
トロンとした顔で、大人しく手を引かれて歩くバンビを連れて自分の部屋に向かった
本来なら座敷に布団を敷いて
そこに寝てもらおうと思ったけど仕方ない
完全に寝入る前に今ある布団へ入れなくては
「ほらバンビ、着いたよ？」
「ぅん...」
電気をつけた部屋
布団をめくり、そこへバンビを横たわらせる
もう完全に目が閉じているバンビは
体勢を整えるようにモソモソと数回動くと、横を向いたまま動かなくなった
その体にそっと布団を掛けてやる
再び電気を、今度は常夜灯にして
「...Aの、匂い(笑)」
「え？」
「...(笑)」
.
しばらく待っても
それ以上バンビからは
何の言葉も発せられなくて
もしかして、寝言？
微かに微笑みを浮かべて眠るバンビを見ながら部屋を後にした
.
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ami(プロフ) - まこさん» まこさん、夏目漱石のエピソード、素敵ですよね。流石偉人は違います。妄想当初はもっとムードある流れで使おうかと思ったのですが、気付いたらこんな感じに(笑)拾って頂けて嬉しかったです！ありがとうございます。引き続きお付き合い下さいね。 (2021年7月14日 17時) (
レス) id: abcc065ec9 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - amiさん！更新ありがとうございます。まさか。ここで大好きな夏目漱石の訳に会えるなんて泣素敵ー！これからも楽しみにしています。 (2021年7月14日 16時) (レス) id: c043fdfdb9 (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - tamaさん» tamaさん、切なさ感じて頂けて嬉しいです。バンビはどこへ行ってしまったのか。今後の更新で明らかにしていきますね。お話に共感して下さり励みになります。 (2021年7月6日 15時) (レス) id: abcc065ec9 (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - 切ない…バンビどこ行っちゃったのかな。 (2021年7月6日 0時) (レス) id: 2b3dad8b2a (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - 千衣さん» 千衣さん、それはもう「人にあらず」でしょうか(笑)悪の経典は観てないですが。←更新楽しみにして下さって励みになります！ありがとうございます。 (2021年7月5日 22時) (レス) id: abcc065ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ami
| 作成日時：2018年1月16日 1時
