チャンミンだけは私の事を ページ20
「アキさんて、ザルなんでしょ？
そんな人が一人で歩けなくなったりする？」
「Aさん...？」
私の様子がいつもと違うから
アイツが不安そうに私の顔を横から覗き込んだ
コト...ン
それに応えるように
手にしていたコップをテーブルに置き
アイツの方へ真っ直ぐ向き直った
「ホントはこうなる事を望んでたんじゃないの？」
「...え」
「聞いたよ？アキさんて
人の彼氏を横取りするのが好きなんだってね」
私を見つめるアイツの瞳が
大きく見開いたのがわかった
信じられない？
そんなの...自分でもわかってる
ヒドイ事を言ってるって
アキさんの事、よく知りもしないクセに
やってる事はさっきの女子大生と
少しも変わらない
でも、私だって女
嫉妬だってするし、醜くもなる
いつもいつも聞き分けよくなんて
そんな事できない
「...Aさん、ソレ本気で言ってるの？」
アイツの顔が真顔になった
それに言葉遣いも
「...本気だよ？」
違う、ホントは気付いて欲しいだけ
チャンミンが好きで
誰より好きで
苦しくて仕方ないこの気持ちを
気付いて欲しいだけ
どうしてこんな事を言うのか
どうしていつもと違うのか
もっと私の言葉に耳を傾けて
アキさんよりも私の事を
チャンミンだけは...
「...アキさんは、そんな人じゃないよ」
少しの間をおいて
アイツがキッパリとした口調でそう言った
「そんな人じゃない」
...チャンミンだけは、私の事を
「Aさんが
そんな事言うなんて思わなかった」
「・・・・」
失望したのか
アイツは小さくため息を溢し
テーブルのコップを持ってキッチンへ行った
「...ッ！」
「えっ、Aさん！」
そんなアイツを一人残して家を飛び出した
.
「ハァハァ...ハァッ！」
頬を切る12月の空気は冷たくて
涙で濡れたそこが痛いくらいだった
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作者名：ami
| 作成日時：2016年3月21日 17時
