負けたくない4 ページ12
「3日は熱が続くと思うから」
お医者さんに言われた通り
解熱剤が切れる頃になると結愛の熱が上がった
食欲もあまりないみたいで
水分補給だけはしっかりするよう心がけた
再び解熱剤が効いたのか、結愛が眠り始め
その間に洗濯物を干そうと寝室を出た時だった
BBBBB...
昨夜から
リビングのテーブルに置きっぱなしになっていた
ケータイが震えた
朝から何度も鳴っていたから
バイブにしてあった
ディスプレイには
「ヒロさん」の文字
アイツじゃない事を確認した私は
その電話に出る事にした
「...もしもし？」
「あっ、もしもしAちゃん？
何かごめんね...結愛ちゃん大丈夫？」
「はい...」
「アイツなんだけど...朝起きたら泣きそうな顔で、どうしようどうしようってすごく慌ててて...アイツはすぐに帰るって言ってたのに、久しぶりに会ってついつい調子にのって飲ませすぎちゃってさ」
「・・・・」
「もうすぐ帰って来ると思うけど
あんまり叱んないでやって？」
ヒロさんの言葉に
何も返す事が出来なかった
考えるのもイヤだった
洗濯物を干し終わり
カゴを片付けにバスルームに向かう
ガチャガチャ...！
すると乱暴に玄関の鍵を開ける音がして
「ハァハァッ...」
息を切らしたアイツが
すごい勢いで家に入ってくるのがわかった
「結愛はっ！」
バスルームにいる私を見つけるなり
両肩を痛いくらい掴んできたアイツ
"顔も洗わずに出ていったよ"
ヒロさんの言葉通り、その頭はボサボサで
このまま電車に乗って来たのかと思うと
アイツの結愛を心配する気持ちが
痛い程伝わってきた
だけど...
どうしてもアイツを許す事ができない
「大丈夫...
今は熱が下がって寝てるから」
私の返事を聞いたアイツが
ホッと胸を撫で下ろした
「肩...痛いから離してくれる？」
そんなアイツを突き放す
「...Aさん、ごめんなさい」
アイツが私を抱き締めようとした
「イヤッ！触らないでっ！！」
その瞬間
自分でも信じられないくらいの叫び声
アイツの体が
ビク！と揺れたのがわかった
こんな感情は初めて
アイツに触れて欲しくなかった
「...どうして、帰って来なかったの？
ずっと待ってたのに...」
私に拒絶されて呆然と佇むアイツに
私はそれだけ言って
パタン...
結愛の眠る寝室の扉を
静かに閉めた
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作者名：ami
| 作成日時：2013年11月15日 8時
