【d】pure Liebe 【ra運営】 (ページ27)

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文章の中で何回も出てくる「何もしていない」という言葉。

何回も出てくる「どうして」という訴え。

紙の所々がシワシワになっており、何らかの液体が落ちたのだろう。

「この髪がいけないんだ、今すぐ引っ張って抜かなきゃ。」

「この目がいけないんだ、どうにかしてほじくれないだろうか。」

普通の人なら思いもしない痛々しい文章。

彼は、お坊ちゃまはこんなにも苦しんでおられたのだ。

誰から？

自分達からだ。

その瞬間、何かから目覚めたかのようにじわりと涙が頬を伝った。

伝えなくては、侯爵様に。

お教えしなければ、奥様に。

彼はこんなにも苦しんでいたと、自分達はなんて事をしていたのだと。

そこからは淡々と事が進んだ。

彼の両親は日記を読んで涙を流した。

父親はとても後悔をした、どうしてあんな事をしたのだと、どうして都市外に追い出したのかと。

母親は涙が止まらなかった、何故噂なんかに踊らされていたのかと、何故今までこの"我が子への愛情"を忘れていたのだと。

それから、彼を担当していたメイド全員をクビにして、新しいメイドを雇った。

昔から仕えていた使用人達を全員呼び出し、自分達が如何に酷い仕打ちを彼へしてしまったのかを訴えた。

酷く後悔する者、許しを懇願しながら泣き叫ぶ者。

それでも「アイツは魔王の使いだ」と主張する者は全てクビにした。

シュルケ家に滞在する者は全員、Aへの謝罪の気持ちでいっぱいだった。

そして考えが甘かった。

「優しいA様は許してくれる。」

その気持ちでいっぱいだった。

本来のAは許してくれただろう、ただ今彼自身の中には本来のAは居ない。

現在のAは彼らを許すはずが無い。

もう二度と、彼らはAに許しを得ることは無い。

気づくのが遅かったのだ。

あーあ。