俺は君の特別になりたい (ページ6)

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｢…えっと…｣
｢やっぱ、今日ホテル行くのやめませんか？｣
｢へ…｣
｢なんか、気が乗らなくて…｣

気が乗らないって…俺だから良かったけど性欲モリモリのオッサンだったらキレてるぞコレ。

｢その代わり、奢るんで俺の話聞いて欲しいんです。｣
｢…別にいいですけど。｣

タダくんもゲイで、ついこの間まで恋人がいたらしい。でも浮気されてフラれてヤケクソでアプリに登録して、顔が好みだった俺に勢いで連絡してみたらしい…が、冷静になって怖気付いてしまった…と。

｢別にいいよ。俺も別にすごいヤリたいってわけでもないし。｣
｢え、そーなん？よかったぁ！ほら、やっぱそーゆー事するのって好きな相手の方がええやん？｣

…好きな相手。そりゃできるなら好きな相手とできるに越したことはないけど、俺には到底無理な話だ。

｢そう…だな。｣
｢…なんか、触れちゃいけん感じやった？｣
｢いや、いいよ別に…羨ましいなって思っただけ｣
｢…羨ましい？｣
｢俺、好きな人となんて一生できないと思うから…｣

そう言うとタダくんはポカンとした顔をしてからニヤリと笑った。

｢あんな、フラれたばっかの時とか未練タラタラな時ってそう思うかもしれんけど、男はソイツだけやないで？例えば目の前にもおるやろ？｣
｢…え｣
｢俺、ヒロミツのこと気になってきてるんやけど。良ければLINE交換せん？｣
｢は？！え、いいけど｣
｢まずはお友達からってやつや｣

別れた後、タダくんのLINEの画面を開いてみる。
｢オークラタダヨシ｣それでハンドルネームタダくんね。安直だな。
そういう俺は名前そのまま｢ヒロミツ｣でやってて、タダくんに｢お前、もうちょい危機感とか持った方がええ｣って怒られたけど。

男は太輔だけじゃない…当たり前のことだけど、俺は多分太輔に囚われすぎていてあんまり周りが見えてなかっただけなのかもしれない。

太輔じゃない別の人を好きになれたら…もしかしたらその人も俺の事好きになってくれる未来があったりするのかな。

そしたら俺も、少しは幸せになれるんだろうか。