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太輔の家に来るのは久しぶりだ。
俺がずっと避けてたから。
何も変わってない風景に少しホッとした。いや、ホッとしてんなよって思うけど、多分ここで彼女の私物を見つけていたら即帰っていた事だろう。
バタンと玄関の扉が閉められると同時に後ろから抱きしめられた。
「な…何してんだよ」
「抱きしめてる」
「動けねぇっての」
いきなりの事で声が震える。
動揺してる俺とは対称に、落ち着いている太輔の声。
なんでこんな事をしてるのかは分からないが、早く腕の中から出なきゃ。
またありもしない勘違いを起こす前にここから出なきゃ。
太輔の腕から出ようと抵抗すると更に強く抱きしめられ、耳元で囁かれる。
「なんで避けたの」
びっくりして動くのを止めると拘束は解けて、その代わり太輔と向かい合わせにさせられる。
言えるわけがない。お前の事が好きだから。お前が彼女といる所なんて見たくない。お前の事を忘れたいから会いたくない。なんて言えない。
「…別に避けてねぇし」
太輔の目を見ていられなくてふいっと逸らす
「嘘だね。あからさまに避けてたじゃん。今日だって引き止めなかったら帰ってたでしょ」
不意に太輔の手が俺の頬を包んで、無理やり太輔と目を合わせさせられる。
「俺、なんか悪い事した…?」
こんな弱々しい太輔は…初めて見た。
少し泣きそうに顔を歪める太輔。そんな顔をさせているのは…俺…なんだろうか。
「…別に?」
「ほんと?俺の事嫌いになった?」
「…なってない。なるわけない
嫌いになれる方法があるなら教えて欲しい。ずっと嫌いになりたいのになれないから。嫌いになれた方がずっと楽なのに。そうさせてくれない太輔は本当に残酷だ。
俺の返答にほっとしたように笑う太輔。
相変わらず笑顔が可愛いな…見とれていたら、また何故か抱きしめられた。
もう俺の中はパニックだ。
なんで?どうして?って気持ちと期待させないで欲しい気持ち。それからまだ少し諦められてなくて嬉しいのと。それでも、こういうのは良くないって頭ではちゃんと分かってるから身を捩って抜け出そうと足掻いた。
「お前、彼女いるんだろ。こういうのまずいんじゃねーの?」
こう言うと目の前の男…太輔はキョトンとした顔で瞬きをした。
「え?なんで?」
「なんでって…」
「幼なじみで友達同士で男同士が抱き合ってるのがなんかまずい?こんなんじゃれ合いみたいなもんじゃん?」
そうだ。コイツはこういう奴だった。
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作者名:ぽんた | 作成日時:2021年2月21日 2時