俺は君の特別になりたい (ページ16)

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「…なんで帰って来ないんだよ……」

何時間待ったんだろうか。いくら待っても太輔は帰ってこない。スマホを見ればあと10分ほどで日付は超える。
バイト？それとも友達の家？
もしかしたらあの女の子と一緒にいるんだろうか。
もう帰ろうか。いや、もしかしたらもう少し待てば帰ってくるかもしれない
そんな事を考えてずっと太輔の家の前で待ってる。
日付超えたら…明日になったら帰ろう。今そう決めた。

明日になるまであと1分。
もう帰った方がいいよな。
そう思って腰を浮かした。

「なに、また来たの」

顔を上げると待っていた人。
いつもだったら嬉しいんだろうけど、今は苦しい…辛い。

「中入れろよ」

いつもみたいなヘラヘラとした笑顔が作れない
いつもと違う態度の俺に太輔も少しづつ不機嫌になっていくのがわかる。

「てかヒロ、俺ん家来すぎ」

イライラしてため息を着きながらそう言われる。ただでさえ傷心状態の俺にはかなりのダメージでどんどん喉の奥が詰まっていくようなそんな感覚を覚えた。

「せめて連絡くらいしろよな。今日はバイトだったけど、遊びに行ったりして家にいない時だって…」
「彼女と？」
「は？」

喉から絞り出した声はとても小さかった。
それでも1度出してしまえば堰を切ったように、どんどんと言葉は流れていく。頭の中でも何を言いたいのかなんて纏めてないのに。

「見たんだ。公園で太輔が告白されてるの」
「ああ…そう…」
「付き合ったの？」
「…付き合って、ない…けど」
「けど？何？」

どんどん責めたような言い方になっていって止まらない。
だって嫌なんだ。他の誰かの太輔なんて。
お願いだから「振った」って「なんでもないよ」って言って

「なんでそこまでヒロに言わないといけないわけ？関係ないじゃん」

でも太輔の口から出た言葉は突き放すようなもので声もとても冷たかった。
何だかどん底に落とされたみたいだ。
また、失恋したんだろうか。今までは遠くて見てるだけだったから「しょうがないよな」って思える部分もあったんだと思う。
でも今回はずっと近くにいた。
それでもやっぱり俺は対象外だ。まぁ、男だから当たり前だよな。
ただの幼なじみで友達に、そんな事細かく話す義務なんてないだろう。

「そう…だな。俺には関係ない…よな」
「…ヒロ、」
「やっぱ俺帰るわ。いきなり来て悪かったな。」

泣きそうなになるのをぐっと堪えて、泣き顔を見られる前に足早に部屋を出て、人目もはばからず泣きながら帰った。