3冊 海底パラドクス ページ5
ガタンガタン…ガタンガタン…
「相違点、食い違い、パラドクス。
世の中には矛盾や勘違いが多いものですね。」
少年は瓶の中の海に浮く
小さな海賊船をゆらゆらと揺らしていた。
「勿論、生きている限り
それと向き合わなければならないですよね。」
オリオン座を過ぎたあたりを
星界鉄道は進み続けていた。
「では、命無きものにも
パラドクスはあるのでしょうか。」
乗客はべっこう飴で出来た人魚姫の
美しい飴細工をじっと眺めた。
「海底に住む少女も夢を見るんだろうね。」
ガタン…ガタンガタン…ガッ…
___________________。
「…あぁ、死んじゃうんだ、私。」
もう何もかも嫌で、私は海に身を投げた。
これは、夢?いつの間にか私は
海底に続く階段の最上段に登っていた。
登った?いや、それも何か違う気がする。
「…降りてみようかな。」
勿論、海の中。でも息は苦しくない。
まるで自分が魚になったみたいだ。
周りには沢山の魚と泡。
すると、急に周りにもう一人私と彼がいた。
その瞬間ぞわっと寒気が体を走った。
「やめて、やめて…!!」
彼が私に甘言を振りまいている。
そんな嘘、吐かないで!!大嫌い!!
『本当に?キライ?』
もうひとりの私がニコニコ笑ってる。
まるで走馬灯みたいだ。
底の方へ進めば進むほど、息が苦しくなる。
追いかけていた夢が、私を追いかけてくる。
両手で耳を塞いで目を瞑って降りていく。
「もう…ッやめてよ…ッ!!消えてッ!!」
ヒステリックに叫んだところで消えやしない。
次は彼が笑いながら言った。
『君が望んだのに?残したいって。
僕を、嫌いだって言ったのに…?』
走って階段を降りる。
忘れてたわけじゃない、ただ、ただ!!
「知らないふりしたかっただけなのにッ!!」
叫んだその瞬間、ハッと気がついた。
パラドクスだ、私の答えが正しいか、
彼の答えが正しいか、相違する。
矛盾、逆説、パラドクス。
答えなんて、無かったのに____?
気づいたその時は息が苦しくなった。
ぼこぼこと口から酸素が泡になって上る。
こんなはずじゃなかったのに。
私はただ…。
「…彼と、幸せになりたかっただけなのに…」
泡になった私を彼は掬ってくれるなら、
それも、いいかもしれないな____。
___________________。
少年は静かに本を閉じた。
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るな(プロフ) - ポラリスさん» いえいえ!これからの展開が楽しみです♪( ´▽`) 更新がんばってください! (2016年6月7日 23時) (レス) id: af0f9885a6 (このIDを非表示/違反報告)
ポラリス(プロフ) - るなさん 閲覧頂きありがとうございます!^^*これから少しづつ色々と繋がっていく予定です!楽しんで頂けたら嬉しい限りです^^*これからもよろしくお願いします! (2016年6月7日 23時) (レス) id: 1badba41ae (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - いつもお世話になってます。最新話すごいですね!話が繋がっているところが魅力だと思います!楽しんで解釈させていただきます(*^^*)失礼しました。 (2016年6月7日 23時) (レス) id: af0f9885a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポラリス | 作成日時:2016年5月9日 16時