──田舎から来た女の子 ページ7
「良いじゃないかA！ 馬子にも衣装だぞ」
いつもなら笑い返すようなホップの冗談めいた口調も、今のAはあまりの目まぐるしさにコクコクと首を振るので精一杯だった。
「ホップさま、Aさま。
明後日には年に１度の祭典《ジムチャレンジ》が開催されます。それも今年は記念すべき２０周年。エキシビジョンマッチと今夜のパーティはその前夜祭！
スペシャルゲストのダンデさまのご招待です。
それでは、おふたりとも存分に楽しんでください！」
「えっ……ちょっと待ってくれよ！？？」
それ以上の詳しい説明もないまま、その広過ぎるフロアにホップとAは置き去りにされてしまった。
精巧なシャンデリアや豪華な支柱、煌びやかな装飾を、うろたえながら見回すふたりはどれだけ立派な装いをしていてもやっぱり───
「あんたら田舎もんでしょ。さっきからキョロキョロしちゃって」
もっともな指摘を受けて、Aはホップと目を合わせてパッと頬を染めた。
「恥ずかしがることなかとよ。あたしもそうだし。広くて迷子になってまうけん」
「なんだよ、アンタ迷子なのか？」
「ち、違うもん！ 今のはものの例えみたいなもんや」
プイとそっぽを向いてしまった女の子は、ピンク色の生地の縁に漆黒のサテンリボンをあしらった都会的なドレスがよく似合っている。
「とにかく……会場はここを真っ直ぐ進んで右。右だからね！ マリィはちゃんと場所わかっとるんやからね」
スタスタと去ってしまうピンク色のドレスの背中を、引き留める理由も見当たらず、そのまま見送ってしまう。
(マリィちゃん…っていうんだ)
こういった場での同じ年頃の女の子の存在は、とても心強い。
彼女の立っていた場所が〈キラリ〉と光る。
『………これ、さっきの子の落とし物かも』
シルバーチャームが揺れる黒のチョーカー。
追いかけようとしたAだったが、開会のアナウンスに反応した人々の波が押し寄せて、あっという間にマリィを見失う。
「A、逆走は無理だ。ひとまず会場へ向かおう！ アニキに会わなくちゃだぞ。
さっきの子なら、同じホテル内にいるんだ、また会えるって」
でも…と言いかけた唇をつぐむ。早く返してあげたいけれど、見失ってしまった以上、この人波に逆らえばそれこそ迷子になってしまう。
ケープの生地の合わせ部分をポケット代わりに、チョーカーを大切にしまっておいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 237人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ポケットモンスター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
栞奈(プロフ) - 終わ、終わり…うわぁぁぁぁぁぁぁぁ (2020年7月18日 15時) (
レス) id: 9e3c94c974 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 終わりって表示されてますけど、まだ続きますよね？続きがとても気になるのでお願いします( ；∀；) (2020年6月14日 20時) (レス) id: b2104f9538 (このIDを非表示/違反報告)
PP(プロフ) - エマりんさん» すみません…唐突なお申し出にちょっとビックリしてしまって…;;; 私の作品を気に入って下さっていたり、ビートやキバナなどのポケモンキャラクターがお好きといった理由でお声掛け頂いている感じでしょうか……？？;;; (2020年2月10日 8時) (レス) id: 55cfe36b05 (このIDを非表示/違反報告)
エマりん - 友達になりませんか？ (2020年2月9日 13時) (レス) id: fd98254018 (このIDを非表示/違反報告)
PP(プロフ) - ねこさん» →キバナさんは面倒見の良い兄貴肌と見せかけたゆるふわ女子…(笑) またぜひ覗いてやってください＊ コメント頂き有難う御座いました！ (2020年1月19日 0時) (レス) id: 55cfe36b05 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：PP | 作成日時：2019年12月20日 22時
