第47話 ページ48
「…………ｯ……！ぁ、………ｶﾊｯ……………ｯ！」
ランプの光に照らされ、苦しそうに藻掻く朔間さんの姿は、
まさしく陽に焼かれて死に逝く吸血鬼の様だった。
ギリギリと締めあげていく途中で、一瞬自分が今していることを自覚して、ゾッとする。
手を緩めそうになったその瞬間、朔間さんの手が僕の手首を掴む。
「…ｯ………覚悟……してやった、んだろ………………最、期まで、やりきれ…根暗野郎…」
ニヤリと唇の端を持ち上げて笑うその顔は、
一年前の生徒会長であり、夢ﾉ咲学院の魔王であった朔間零、そのものであった。
もう一度全身の力を1箇所に集中させる。
「……………どうして君は、そんなに強いんだい？どうしてこんな状況で、笑っていられるの…………」
「………………さ、あな」
だんだんと細くなる気管から絞り出したその言葉は、殆どただの空気となって宙に消えた。
_______________
薄く開かれた瞳はもう何も映さない。
僕は静かに彼の瞼を下ろしてあげた。
僕ができる、最期の誠意のつもりだった。
_______________
死んだ彼の身体は、まだ温もりが残っているとはいえ鉛のようで
僕は彼を背負って階段を登りながら浅い呼吸を繰り返した。
流石に右腕が痛いし手負いの状態で彼を抱えるのは想像以上に大変だったけれど
せめて彼を自室のベッドに寝かせてあげたかった。
_______________
なんとか彼をベッドに寝かせることに成功した。
すっかり身体は冷えきってしまっている。
彼の陶器のような白い頬に触れ、僕は
「ごめんね、ありがとう」
そう呟いた。
_______________
朔間さんの部屋を出て、ため息を一つ零す。
9人の仲間がそれぞれ眠っている部屋の扉に触れながら、僕は色々なことを思い返していた。
荒廃して腐りきった学院。
そこに入学した僕ら。
傷つけて、傷ついて
ようやく作り上げた秩序。
そして再び起った革命。
キラキラと輝く新たな綺羅星。
こんなに沢山の事があったのに、まだ3年しか経ってないんだ。
この学院を出て、芸能界に新たな風を吹かせるために、弱い身体に鞭打って生きてきた。
そんな夢も_______________もう終わる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 67人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
卍みきちゃま卍(プロフ) - スーダンみたいで好きだ... (2019年8月23日 9時) (
レス) id: 139c03c43b (このIDを非表示/違反報告)
捕鯨船(プロフ) - 報告ありがとうございます！修正しました！ (2018年2月3日 19時) (レス) id: b2d51ee9ad (このIDを非表示/違反報告)
さくらもち@Cherry blossom(プロフ) - それと、38の時"1日しかに7人"となっていました。最後に47のところ"彼を手負いの状態で彼を"となっていました。続編も楽しみにしてます！ (2018年2月3日 19時) (レス) id: bd93821e26 (このIDを非表示/違反報告)
さくらもち@Cherry blossom(プロフ) - コメント失礼します！原作も読んだことあるのですが、また違ったキャラで読むと面白くて、とても良かったです！いくつか気になる点があるのですが、12の時"高峰"となってますが正しくは"高峯"ですよ〜。 (2018年2月3日 19時) (レス) id: bd93821e26 (このIDを非表示/違反報告)
海希 - あ、あと、この事件を知ったあと学院の人達がどんな感じなのか気になります！！ (2018年1月25日 22時) (レス) id: 426add2276 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なつほ | 作成日時：2017年12月21日 2時
