55話 ページ15
────
──
─
「……二度目はなくってよ!」
「……」
「……なくって……よっ……て……、笑うとこだろお!」
中也と太宰による様々な攻防戦はこのような形で終了した。
中也は怒り、もしくは羞恥に顔を赤く染め、その場を去ろうとする。
「あぁ、ギャグが滑った君、待ちたまえ。」
「喧嘩売ってんのか。」
そんな立ち去ろうとする中也を若干喧嘩売りながら止める太宰。
「……ねぇ、Aはどうしてる?」
この言葉に緩んでいた空気が再び張り詰める。
そう、太宰の三つ目の目的、それはAの現状を知ることだった。
「……手前がその名前を呼ぶ資格はねぇ。」
中也は血が出る勢いで拳を握り締める
「おや、随分と厳しいものだね。」
「あたりめぇだろ。手前は四年前のあの日、彼奴を置いてったんだからなァ。しかも?ご丁寧に睡眠薬まで飲ませて。」
“中也”太宰が妙に真剣な声で相棒の名を呼ぶ。
「私はAを置いてったんではない。逆に私はAのことをずっと待っていたのだよ?」
「はぁ?何わけわかんねぇこと言ってやがる。」
中也の言葉に気にせず太宰は続ける。
「私はねぇ、昔から君のことが邪魔で仕方なかった。あぁ、性格が合わないとかそういう話ではないよ?」
「……」
中也は黙って話を聞いている。
「Aの中には何時だって君が中心にいる。Aは君の事を信用し、君がAの愛する者だった。」
「けれど私はそれが気にくわなかった。」
「君がいるからAは幾ら私が手を差し伸べようとその手を取らない。
君がいるからAは私がどれだけ愛を謳おうと応えはしない。」
「それが気にくわなかった。だから私はね、考えたのだよ。どうしたら私と同じように執着し、依存するのかを。」
太宰の言葉に段々と中也は悪い予感を覚える。
「……どういう意味だ、」
太宰は笑みを深める。
「もし、ずっと隣で手を差し伸べていた者が急に居なくなったら?もし、ずっと隣で愛を謳っていた者が突然消えてしまったら?」
「……答えは簡単。少なからず困惑するだろうね。そしてAは少なからず私に惹かれていた。」
「そんな私が突然消えてしまうんだ。あの子の中は“どうして?”“なんで?”という気持ちでいっぱいになるだろう。」
「そうして“どうして?”“なんで?”という気持ちは執着,依存といわれるものに姿を変えていく。」
152人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「太宰治」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山猫(プロフ) - ゆちよきしさん» 全然大丈夫です!もう描いてもらえるだけで本当にありがたいんで!! (2019年2月27日 23時) (レス) id: 8fa618dd04 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちよきし(プロフ) - 山猫さん» 了解です!少し絵柄が違うかもしれませんが、その時はすみません... (2019年2月27日 22時) (レス) id: 74d3721888 (このIDを非表示/違反報告)
山猫(プロフ) - ゆちよきしさん» 描いてもらえるだけで本当に嬉しいのでどちらでも大丈夫です!描いてくれて本当にありがとうございます! (2019年2月27日 22時) (レス) id: 8fa618dd04 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちよきし(プロフ) - 山猫さん» 夢主ちゃんのことなのですが...4年前と現在の姿は別々のイラストが良いですか?それとも一緒の方が良いですか?2パターン描いてはいるのですが... (2019年2月27日 22時) (レス) id: 74d3721888 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちよきし(プロフ) - 山猫さん» 了解です!いえいえ!!ありがとうございました! (2019年2月19日 8時) (レス) id: 74d3721888 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:山猫 | 作成日時:2019年2月9日 14時