きゅーけー中編集

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伊沢さんなんかはそんなこと気にしないどころか、きっとそれすら力に変えて頑張れるんだろう。でも弱い自分にはそれができない。

見なければいい、気にするからダメなんだと思いながらも、それを見てしまう。そして自傷行為をしてしまう。もう指はボロボロ、唇も切れて血が出ていた。

でもそんな軽い自傷行為じゃもうごまかせなかった。自分を保つことができなかった。



そんな日々が続いて、いつものように爪を噛んでいた時、ふと目に留まったのはカッターだった。見た瞬間それに惹きつけられてしまった。あれで手首をきったらどうなるんだろう。それはダメだ、そんなことしてもどうにもならないと分かっていたが、もう正常な判断ができないほど追い詰められていた。

震える手でそっとカッターを握った。
カチ…カチ…
カッターの刃を出す音がやけに響いた。その刃先から目が離せない。そっと、でも確実に左手首を切りつける。
痛い、傷は深くないから少し血が滲んだだけだったが痛かった。手首に入った赤い線と痛みを感じて、生きてる、まだ自分はここにいる、と思ってしまった。リスカすると心が落ち着く気がした。

そこからリスカにのめり込んだのは一瞬だった。一度やってしまうともう止まらない。今日だけ…と思っていたのがだんだん間隔が狭くなって、気づけば毎日のようにリスカをしてしまうよにうなった。

リスカをすると心が安らぐ気がした。
自分がたしかにここにいる、まだ痛みを感じられる。自分が感じてる痛みはリスカの痛みだけだ。自分は他人の言葉ひとつで傷つく弱い人間なんかじゃない、そう思えた。
でもその安心は一瞬で、すぐ罪悪感と自己嫌悪に陥る。リスカした事実に落ち込み眠れなくなる日々が続いた。
ストレス解消のためにやり始めたリスカなのにストレスが溜まるばかりで、悪循環に陥っていた。


2ヶ月経つ頃にはもう左腕は傷をつけるところがないほどボロボロになっていた。
幸い今は冬で長袖を着ていても不審に思われることはなかったので、包帯を巻き、なるべく見えないように細心の注意をはらって仕事をした。

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