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目線をつりあげ真っ直ぐに見つめると、ドリンクバー付近でたむろしている3人の男性が目に付いた。小柄な男性が一人と、体格の大きな男性が二人。ドリンクを選んでいるような雰囲気では無く鞄も上着も手元にあるのだから、恐らくこれから退店されるのだろう。
…と、思い待機していたのだが、彼らは一向に動こうとしない。こちらを常に伺うような様子で、何やらひそひそと談笑しているばかりだ。
ドリンクバー前を陣取られては、他のお客様のご迷惑となりかねない。あまり本意では無いが、もう少し様子を見て動きが無いようであれば声をかけにいこうと決意した時だった。
「あの、ぺいんとって人の事、何か知りませんか……！？」
三人のうちの小柄な男性が、駆け寄って声をかけてきた。何やら必死な様子であり、叩かれたレジカウンターが情けなく悲鳴を上げた。
男性だと断定してしまっていたが、近くで見ると身体のパーツが女性的なようにも思える。毛先は重力に沿って落とされていて、美意識の高さが感じられた。
「ちょっとしにがみくん、流石にいきなり過ぎるって」
「クロノアさんの言う通りですよ。…すみませんね店員さん。とりあえずお会計お願いします」
後の二人が追いかけてきて、三人が目の前に揃う。
ぺいんと、の文字に、一切聞き覚えはない。しかし、どこかで見かけた風貌と、どこかで耳にしたこの掛け合い方。私に残る微かな記憶が、彼らに向けて反応していた。
冷静になって立ち止まれば、私情だけでお客様個人を特定するなどあってはならない事である。ただ、私の中での彼は、もはやお客様の枠に留まっていなかった。
『知ってる……かも、しれません』
そこで初めて気がつく。
目の前の男性たちは紛れもなく、かつて彼と25番テーブルを囲っていたあの3人であった。
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作者名：えん | 作成日時：2024年2月27日 15時
